入信してしまった親族を説得するとき、まず意識すべきは新興宗教に対するマイナスイメージを捨てること。説得する側が先入観を抱いたままだと、決して話がかみ合いません。どんな教団かを調べ、必要なら一緒に集会に参加してみる。宗教について理解しようという姿勢が、話し合う余地を生むわけです。

霊感商法の被害は再び増加しつつある
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宗教団体も人間の集団です。信者全員が、教祖は絶対だとあがめているわけではありません。会社などの組織と同じで、教団や教義に対する考えや立場は人により様々。入信したばかりの段階では、人間関係の煩わしさ、教祖や幹部への不満から信仰心が揺らぐことが多いんです。この段階で相手の言い分を忖度しながら冷静に対話できれば、引き戻せる可能性は高くなります。

脱会の手助けをしてくれるボランティア団体などの力を借りるという手もありますが、ムリヤリやめさせたとしても根本的な問題は残ったまま。一時的に信仰を捨てさせたものの、別の教団に入信してしまったという話はよく聞きます。入信、脱会を繰り返し、いくつもの教団を移り歩く「渡り鳥」と呼ばれる人々もいます。

そうした人にとって、宗教は逃げ場にすぎません。出家して家族との関係を絶とうとするのは、家族間に問題があったから。本人が抱える問題と向き合い、根本から解決しない限り「渡り鳥」を繰り返すだけです。

たとえ脱会したとしても、宗教活動に関わった体験というものはなくなりません。身近な人たちが、宗教経験をマイナスにとらえていると人生そのものを否定されたと感じ、立ち直るきっかけを失ってしまいます。歴史を振り返るまでもなく、人と宗教は切り離せません。親族が新興宗教にはまっても、人生に必要な体験だと受け入れるくらいの余裕を持ち、対話するべきだと思いますね。

(山川 徹=構成 門間新弥=撮影)