効果と効率の掛け合わせが最大になるようにするにはどうすればよいか。私は最初の課題設定に尽きると思います。何に対して解を出すのか、何に対して目標を立てるのかという課題設定がぶれていると、当然解決策もぶれます。課題設定からやり直すことになれば二度手間です。

設定する課題の範囲が広すぎれば、集めなければならない情報量が増えて効率が落ちる。逆に課題設定の範囲が狭すぎると、本質的な答えに辿りつけなくなってしまいます。

課題さえ正しく設定できれば、仕事の7割は終わったというのが私の経験的な実感です。課題や目標が的確に想定できた時点で、すでに課題解決や目標達成への道筋はできかけているからです。だからこそ、考えに考え抜いて課題を設定します。たとえば、一つの仕事にかける時間が30時間とすると、そのうち20時間ぐらいは課題設定にかけています。極論を言っているのではありません。入り口が間違っていたら、後はいくらやってもダメなのです。

課題解決のためには、仮説と検証を繰り返しながら正解に近づいてゆくというアプローチの仕方もあります。それもまた正しい。しかし、時間を有効に使うという視点で考えると、最初の課題設定に時間をかけるほうが効果と効率は保証されるように思います。

若いビジネスマンなら「考える前に動け」とか「走りながら考えろ」と言われることもあるでしょう。ただ、やたらデータを集めて仕事をしたような気になっても、価値のあるアウトプットはまず出てきません。

私もマッキンゼーに入ったばかりの頃、毎日のように50枚、100枚と分析チャートをつくっていましたが、99%が無駄に終わりました。そのときの経験から、仕事をするときこれは何のためなのか、誰に向けたものなのかと考える癖がつきました。

若いコンサルタントたちによく言っているのは、「人が2時間考えることなら、4時間考えろ」ということです。追い詰められて2時間も3時間も考え抜けば、何か捻り出せます。十分に考えないまま情報収集に走る人が多いようですが、経験が少なくても、本気になって考え尽くせばより本質に近い答えを出せるものです。

精度の高い課題設定や目標設定をするための効率的かつ効果的な手がかりとして、次回、私がマッキンゼー時代に学んだ4つの原理原則を紹介しましょう。

※すべて雑誌掲載当時

(小川 剛=構成 小原孝博=撮影)