東日本大震災の発生から、半年以上がすぎた。読者諸氏の多くは、日本経済はいまだ震災前の状態までは回復していないという認識ではないだろうか。最近のある調査によると、日本経済が震災前の水準に戻るまでにかかる時間を尋ねたところ、「永遠に戻らない」という回答が最も多く、「すでに戻っている」と答えた人はわずかだったそうだ。原発問題もあり、震災がマインドを相当冷やしたことが窺える。

だが実際の数字を追ってみると、すでに鉱工業生産で8割以上、内需にほぼ相関する第3次産業活動の水準でいえば震災前をクリアしている。経済の専門家たちも含め、サプライチェーンの問題を余計に心配し、日本がリカバーしている間に中国や韓国に市場シェアを奪われることを懸念したのだろう。確かに失ったシェアは簡単には戻せない。しかし、こういった問題への対処については日本人は抜群に早い。ダメージの原因がはっきりしている以上、元に戻すのは得意技だ。他国であれば、こうもうまくはいかないだろう。

とはいえ、この水準をリーマン・ショック前までに戻そうとすると大変だ。実は震災によって日本経済が受けたダメージは、リーマン・ショックのときの3分の1にすぎない。

通貨高も言い訳にできない。スウェーデンなど、通貨高でも元気な国はほかにもあるからだ。ただ、無制限の市場介入に踏み切ったスイスはさすがに厳しい。購買力平価で考えても、かつてない通貨高に直面している。日本はここまでは追い詰められていない。

今、日本経済は確実に回復の途上にある。世界経済の減速は、震災とは別にすでに起こっていたことだ。ささやかれている米国の景気減速懸念や欧州発の金融不安は、実は新興国の引き締めにより年初あたりから始まっていたものだ。とはいえ米国も、雇用者数は着実に回復しているし、消費支出だけでいえば、リーマン・ショック前の水準をすでに取り戻している。

着目すべきは各国の政策金利だ。特に新興国の引き締め姿勢の復活には注意したい。だがG20体制が確立し、新興国といえども国際協調を考えなくてはいけなくなった。世界あっての日本経済。すでに底は見えている。静かに回復を待ちたい。

※すべて雑誌掲載当時