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前中国共産党総書記 江沢民(ジアン・ズーミン)
1926年、中国江蘇省生まれ。上海交通大学卒。82年党大会で中央委員に選出。83年電子工業部部長(大臣)就任。93年国家主席就任。2003年国家主席退任。


 

北京・人民大会堂で開かれた辛亥革命100周年記念式典。7月に死亡説や脳死説が流れた江沢民前中国共産党総書記が舞台に突如姿を現し、会場はどよめいた。介添えはいたものの、顔色はよく、右手を上げて健全ぶりをアピール。江氏の出席は、当日まで、党中央指導部ですら限られた者しか知らされていなかったという。胡錦濤主席も知らされていたかどうか。2012年の政権交代まで約1年、中央人事をめぐる駆け引きが佳境に入ろうとするタイミングで、失われたはずと思われていた江氏の政治生命は不死鳥のように蘇り、胡氏の前に舞い降りた。

1989年の天安門事件で鄧小平が失脚した趙紫陽の穴をうめる形で総書記に抜擢。鄧氏の圧倒的な影響力のもと、右も左もわからぬ北京での孤独と苦労は自身が回顧録で触れている。13年かけて一人また一人、上海から子飼いの部下を中央に呼び寄せ、人事を掌握することで利権関係を基礎にした強固な「上海閥」を形成。胡・温(家宝)体制に政権を委譲した後も、厳然と影響力を発揮し、以降の権力暗闘は江VS胡の文脈で語られることが多い。当初次期総書記と目されていた李克強氏を差し置いて、上海市委書記だった習近平氏が総書記候補にのし上がったのも上海閥の基盤の強さの表れだ。

死去の噂は胡氏側が江氏の重態情報をキャッチし、上海閥政治家の動揺を誘う目的で流したという見方がある。結果、香港アジアテレビと日本の産経新聞が踊らされたが、むしろ効果的な“復活劇”により、政治的存在感、影響力の強さを知らしめる格好となった。道教寺院めぐりと占い(算命)が趣味で意外に信心深い。11年夏まで続くであろう人事をめぐる攻防は、ご老体の健康が鍵となるだろうが、ゆくえを見極めるのは道教の神様でも難しい。