新型コロナウイルス感染症のワクチン接種がすすむ中、「絶対ワクチン接種をすべき」「危険だから絶対に打たない方がいい」など、意見を押しつける人に困っている人がいるようです。こうした面倒な人をかわすにはどうしたらよいのでしょうか。精神科医の井上智介さんがアドバイスします――。
コロナウイルスワクチン
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「自分の意見を押しつける人」の心理

「ワクチン派」対「反ワクチン派」、どちらの考えを持つのも自由なので、それ自体に全く問題はありませんが、考えを人に押しつけてくるとなると考えものです。自分の正当性を過剰にアピールされると、本当に面倒ですよね。ワクチンに限らず、相手の趣味嗜好を全く気にせず、自分の好きな店や音楽などを一方的に押しつけてくる人と根本は同じです。

こういうタイプの人は、「自分が絶対に正しい」と思い込んでいますが、それが思い込みとは全く気づいていない。そういう厄介な人の心理構造としては、次の3つが考えられます。

(1)支配欲が強い

自分の考えを相手に押しつけ、相手がそれを受け入れると、支配欲が満たされて、「相手をコントロールできた」という自己効力感が高まります。

ただ、誰もがすんなり自分の意見を肯定してくれるわけではありません。否定されたとしても、支配欲を満たしたいがためにしつこく考えを押しつけてきて、ついには「あなたのために教えてあげているんだよ」と言い始めます。本当は自分の支配欲を満たしたいだけなのに、「あなたのために言っている」という理由を持ち出すパターンは非常に多いので、こうした言動の裏にある心理構造を知っておきましょう。

(2)承認欲求を満たしたい

自分の考えを押しつけてくる人は、「自分の正しさをわかってもらいたい」「相手の知らないことを自分が知っているのだと認められたい」という欲求を持っています。「あなたはすごいね」「あなたの言葉で助かったよ」と言ってもらいたがっているのです。つまり、根底には「認められたい」という強い承認欲求があります。

(3)自己愛の保護

もともと自分の意見を押しつける人は、自分の意見に自信があるので、自己評価がかなり高い。その背景にあるのが、強い自己愛です。つまり「自分は特別な人間だから、評価されて当然」という思いを持っているのです。

ですから、自分の意見が少しでも否定されると、「低く見られた」「自分を全否定された」と思い込む。そして、周りから孤立するのではないかという恐怖心におそわれて、さらに自分の意見を周りに押しつけて、仲間をつくろうとします。こちらが否定すればするほど自分の意見を押しつけてくるのは、自己愛を守るための行動なのです。