2014年まで青果の輸出がほぼゼロだった茨城県が、農産物輸出を急増させている。初代JETRO(日本貿易振興機構)茨城事務所長の西川壮太郎さんは「バイヤーを招待して実際に商品や生産現場を見てもらう。『百聞は一見に如かず』だ」という——。

※本稿は、西川壮太郎ほか『グローカルビジネスのすすめ』(紫洲書院)の一部を再編集したものです。

「海外で稼ぐ」なくして繁栄はあり得ない

西川です。ここでは、地元産品を海外に売り込むグローカルビジネスの身近な実例として、茨城県が農産物を海外に輸出することにより、地域活性化に成功した事例をご紹介します。この事例で得られた知見は他県の場合にも十分に応用可能だと思いますので、これを横展開して日本の地方経済の復興に少しでもつながればありがたいと思っています。

まずは質問から始めさせていただきます。『私たち日本人は、世界で何番目にお金を稼いでいる国民でしょうか?』。

日本は、アメリカ、中国に次いで、世界第3位の経済大国だということは広く知られています。しかし、これはあくまで国全体で計算した場合に限られるということはご存知でしょうか?

日本が一年に稼ぐ金額(GDP)を一人当たりに換算すると、実は世界25位にまで後退してしまいます(図表1)。国際通貨基金(IMF)が2020年に発表したデータによると、日本の一人当たりGDPは年間約400万円(4万256米ドル)とされており、ヨーロッパ諸国はおろか、シンガポールや香港よりも稼ぎが低いということになります。

今後のわが国が確実に迎えるであろう超高齢化社会や人口減少による影響を考えると、労働人口が減り、国内の需要も期待できなくなるでしょう。このような環境では「海外で稼ぐ」ことなくして、日本人が再び豊かな生活を取り戻すことはあり得ないといえるのではないでしょうか。