日本で報道されない根強いトランプ人気

米国は個人主義の国である。これだけ新型コロナウイルスが猛威をふるっており、しかもほぼ安全なワクチンが開発されていても、バイデン大統領のワクチンの強制的義務付けの方針には、共和党支持者およびワクチンを受ける子どもの親などから強烈な反対運動が起こっている。自分の体は自分で面倒を見るというのが合衆国憲法に保障された人権だと反対派は言うのである。ウイルスの伝播を防ぐマスク着用の強制についても同様で、米国は個人主義の行きすぎと科学への無知から、多くの人命が失われている。

ワクチン接種などの義務化に抗議するデモ(米ニューヨーク)。
ワクチン接種などの義務化に抗議するデモ(米ニューヨーク)。(AP/アフロ=写真)

日本だと一応、科学的知識として認識されていることは皆の行動の前提となるが、米国ではそうでない。旧約聖書の記述と違っているからとして、ダーウィンの進化論を認めない人もいまだに多い。また、今でも南部諸州を中心に共和党を地盤とする20数州の知事が、ワクチン接種の義務付けに反対している。もし日本で同様にワクチン接種を義務付けしたとしても、野党を母体とする地方の知事が、ワクチン接種強制に反対するとはとても考えられないだろう。

人が一緒に住むところでは、疫病は直接に伝播する。このように経済学でいう「外部性」のあるところでは、個人の自由に任せておいたのでは社会の福祉は達成できない。