ヨットの体験から課題解決法を習得

<strong>富士ゼロックス社長 山本忠人</strong>●1945年、神奈川県生まれ。山梨大学工学部卒業。2007年6月より現職。ヨット、釣り、音楽鑑賞など多趣味。
富士ゼロックス社長 山本忠人●1945年、神奈川県生まれ。山梨大学工学部卒業。2007年6月より現職。ヨット、釣り、音楽鑑賞など多趣味。

仕事が趣味という人を、私は否定するつもりはない。仕事にやりがいを感じて、楽しく過ごせるのは幸せなことだ。ただ、できれば生涯続けられる趣味を持つことを勧める。それもできれば若いうちが望ましい。というのは、趣味が、会社以外の人脈を広げ、結果的に仕事にも人生にも、大きなプラスをもたらすからだ。

私は、子供の頃から夏は釣り、冬はスキーがあたりまえ。これは社会人になってからも続け、30歳ぐらいからはセーリングも始めた。30代、40代はヨットに没頭し、毎週のように海に出かけたものだ。いまは、全長32フィート(約10メートル)のヨットを仲間と所有し、年に2、3回だが沖に出て、初日の出を拝んだり、釣り糸を垂れたりしている。

私は趣味の効用を、次のように考えている。まず、多様な人たちの意見を聞けることである。異業種の文化やしきたりを知ることは、見識を養うのに非常に役に立つ。さらに、技術系出身の私の場合、これまで異業種の人と出会う機会が少なかったため、趣味を通じての出会いから仕事に役立つヒントを見つけられることも多い。海で困難に直面することで、課題を抽出するノウハウを自然に身に付けることもできた。

例えば、ヨットで八丈島をめざすと、ほぼ一昼夜を費やすこととなる。乗り組むクルーは5人、最年長の私がキャプテンを務めることが多い。しかし、いつも順風満帆とは限らない。海が荒れることもあれば、搭載している機器が故障することもある。

そうした場合、危機を脱するためにデシジョンをするのは私の役目だ。と同時に仲間を信頼し、一体となって動く。そのプロセスとコミュニケーションが実に心地いい。私は、そういうときは、会社のことはまったく考えない。が、それでも、私自身の統率力が培われ、仕事上での問題解決にも生かせるものとなった。