超巨大産業“原発”を誰が推進しているのか

原子力委員会は9月27日、事故以降に国民から寄せられた4500件の原発に関する意見で、「脱原発」を求める声が98%(直ちに廃止67%+段階的に廃止31%)に達したことを公表した。その2日後、文科省も福島第一原発から200キロ以上離れた埼玉、千葉などで3万~6万ベクレルのセシウムが沈着していたことを発表している。東京・神奈川・新潟の数値はまだ発表されていない(10月2日現在)が、福島県内の双葉町・浪江町・飯舘村など原発敷地外で、土壌からプルトニウム238が検出されたことも報告された。

チェルノブイリ原発事故では、「3万7000ベクレル以上が汚染区域」とされ、「妊婦や子どもの移住が必要な限界管理区域は55万ベクレル以上」とされた。マスコミによる誘導とは一線を画した世論の勢いに押されて、今回の原発事故による環境汚染がこれに相当するレベルで広範囲に広がっていることを、日本政府もやっと認めたということだ。

9月に都内で約6万人(主催者発表)を集めた“脱原発”デモ。「原子力ムラ」住民に痛痒を与えることはできたのか。(ロイター/AFLO=写真)

9月に都内で約6万人(主催者発表)を集めた“脱原発”デモ。「原子力ムラ」住民に痛痒を与えることはできたのか。(ロイター/AFLO=写真)

ところが、同時期に開かれた政府の原子力災害対策本部では、福島原発周辺の半径20~30キロ圏内を線引きした「緊急時避難準備区域」(4月指定)の解除を決めている。そのため、自治体や避難中の町民には、「帰れるのか帰れないのかさっぱりわからない」「除染はもう終わったのか?」「順序が滅茶苦茶」「危険だけど帰れと言われているような気分」といった不満や不安が渦巻いている。除染作業は今、始まったばかりだからだ。

実際、放射性物質の拡散・沈着も依然として続いている。10月2日午後21時現在の双葉町山田の放射線量は「毎時24.72マイクロシーベルト」。この付近の平常値である毎時0.071マイクロシーベルトを、実に350倍近くも上回る驚異的な数値だ。

安全論議を放置したまま再稼働の勢いが強まる原発問題は、抑止力論議を封印したまま新基地建設を強要される在沖米軍問題と似ている。それは、日米欧をまたがる超巨大産業「原発」が、実は核問題との共生関係にあることを暗示するものでもある。「推進力の源」が白日の下に晒されなければ、国民の脱原発運動も単なる“ガス抜き”で終わってしまう。

(写真=ロイター/AFLO)