松下電器がパナソニックに社名変更することが大きな話題となった。

松下電器には、松下電器という社名、ナショナル、パナソニックというブランド名、という3つの顔がある。社名を世界的に浸透しているパナソニックに統一することで、海外市場のシェア拡大に乗り出すのが狙いだ。

社名変更を行う理由はさまざまだが、事業拡大などで創立時につけた社名では違和感がある、といった例もある。業種に特化したネーミングが流行った時代もあったが、今はそれをとることが多い。

海外進出する際、発音しやすい社名に変更するという例、難しい漢字を用いた社名をカタカナ表記にする例もある。

以上は前向きな社名変更だが、なかにはこんな理由で変更したIT企業の例もある。退職した社員が社員名簿を持ち出し、それを基に引き抜きを行ったうえ、会社が訴訟を受けた際の訴状をネットで公開。会社と従業員が揉めている会社として一部で話題となり、上場を目指していたその会社は、社名変更してイメージの刷新を図らざるをえなかった。

会社の顔である社名を変えるのは大きな決断を要することであり、とくに発展的な理由が見当たらない場合は注意を払う必要がある。社名をたびたび変更していないか、移転が多くないかなどは、登記簿の履歴事項で確認できる。

この登記簿から代表者の財産を調べたところ、多くの抵当権が設定されていることがわかり、顧客に取引停止を進言したという弁護士の話を聞いたこともある。
登記簿には重要情報が隠れているというわけだが、登記簿だけで信用すると思わぬ落とし穴に嵌ることもある。

たとえば、以前こんなケースを耳にした。インターネットを使ったネット取引で小物の卸売りを手掛けた都内在住の人のもとに、地方の会社から200万円分の注文が入ったという。大口の取引だったこともあり、顧問会計士は観光を兼ねるつもりで会いに行くことを勧めた。しかし当人は聞き入れず、登記簿を確認。社歴2年で、とくに問題とするような記述は見当たらなかったということで、商談に応じた。しかし期日になっても入金はなく、催促しても少額の入金があるのみ。しまいには連絡もつかなくなった。