古都に走った激震

「10年以内に財政が破綻はたんしかねない」

門川大作京都市長のこの一言が全国ニュースとなって駆け巡った。2020年から続くコロナの影響、繰り返される緊急事態宣言の発出は、京都の観光業界にかつてない試練をもたらした。

2020年には米国の大手旅行誌『コンデ・ナスト・トラベラー』が発表した世界人気都市ランキングで、京都は初の1位に選ばれた。だが、観光寺院は閑古鳥が鳴き、往年の京都の見る影もない。

そのせいもあってか、「観光客が来なくなり京都市財政は苦境に陥っている」と一般に解釈されがちだが、まったくそうではない。

実は、京都で本当に深刻な問題は観光ではなく、「財政」と「人口」だ。都市の根幹が揺らぎ始めているのである。

確かに観光業は大変だ。お盆の最中、銀閣寺門前を訪れたが、開いている店はたったの3軒、すれちがった観光客はわずか数人……。清水寺門前も伏見稲荷門前も同じような光景が広がっていた。

2021年8月13日15時、人気のない銀閣寺門前街の様子
写真=筆者提供
2021年8月13日15時、人気のない銀閣寺門前街の様子

ただ、観光客の減少は一過性にすぎず、コロナの収束とともに昔の京都の姿を取り戻すことだろう。

一方、いちじるしい財政悪化と人口減少は、コロナ収束後もすぐに歯止めをかけることができるはずもなく、改善は至難の業だ。

「観光客では潤わない」京都市財政

まず、申し上げておかねばならないのは、財政が厳しくなったのは観光のせいではないということだ。

まず、市税の主たる収入は固定資産税と市民税であり、観光客が来ても市自体はあまり潤わない。また、寺社仏閣や大学が多く、固定資産税が少ないから財政が厳しいというのも誤った見方である。なぜなら他都市よりも収入が少ない分は、原則国が補塡ほてんする制度になっているからだ。

過剰投資と甘い見通しで作られた地下鉄建設時の負債が大きいという問題はある。しかし、高金利で借り入れをしていた平成時代のほうがはるかに財政負担は大きく、借り換えをしたいまはずいぶん楽になっている。