3月11日に発生した東日本大震災、原発事故で疲弊しきったかに見える日本。グローバル経済を熟知するソニー元CEOが、いま、日本復活のシナリオを語る。

日本流を貫き、中小国の支持を得よ

<strong>クオンタムリープ代表取締役 出井伸之</strong>●1937年、東京都生まれ。60年早稲田大学政治経済学部卒業後、ソニー入社。スイス留学、フランス駐在、オーディオ事業部長、広告宣伝本部長などを経て、95年社長、99年CEO、2000年会長兼CEOを経て05年退任。06年クオンタムリープを設立し、現職。現在、アクセンチュア、百度、フリービットの社外取締役を兼任し、ソニーアドバイザリーボード議長としても、社内外に提言活動を続ける。
クオンタムリープ代表取締役
出井伸之

1937年、東京都生まれ。60年早稲田大学政治経済学部卒業後、ソニー入社。スイス留学、フランス駐在、オーディオ事業部長、広告宣伝本部長などを経て、95年社長、99年CEO、2000年会長兼CEOを経て05年退任。06年クオンタムリープを設立し、現職。現在、アクセンチュア、百度、フリービットの社外取締役を兼任し、ソニーアドバイザリーボード議長としても、社内外に提言活動を続ける。

これからの事業は、構想段階からグローバル化を念頭におかないと大きな発展は期待できない。国内には1億2500万人しかいないのだから、少なくともアジアにまで広げることを事業のベースに考えるべきだ。

ネットの世界では、日本にも、DeNA、ミクシィ、グリーなど優良企業は何社もある。しかし、言葉のハンディキャップもあって、国内市場に留まっているだけだと実に惜しい。

日本がグローバル化を本気で進めるなら、国の政策、企業経営のしくみ、個人の働き方まで徹底的にグローバル化を進める必要がある。地価、輸送費、電気料金、人件費など現在の高コスト構造は、日本企業の足かせとなって競争力にブレーキをかけている。デフレが進んだといわれるが、もともと商品の価格が海外に比べれば高いのだ。

海外進出の方法も、海外企業に迎合し、何でも欧米流を真似するところが多い。そうではなく、いっそ日本流を徹底して貫くのも戦略の一つだ。

例えば、京都という都市は、ローカルな閉鎖性と豊かな開放性を併せ持ち、伝統を重んじながらも常に新陳代謝をつづける革新性がある。あえて「うち」と「そと」を分かつ敷居を高くし、希少感のあるブランドを維持している。このような「京都モデル」を日本全体で発揮してみるのも面白い。