グリーは11年1月に北米拠点を開設。4月には全世界に7500万人の会員を持つOpenFeint社を完全子会社化。さらに10月から韓国、シンガポール、イギリス、オランダ、ブラジルに海外拠点を設立する。DeNAも海外展開を加速させている。米国や中国、オランダ、シンガポールなどに拠点を開設。9月にはベトナムのソフト開発会社を買収した。

日本発のソーシャルゲームは、海外に飛躍できるのか。議論の焦点は日本市場の特殊性だ。モバゲーの会員1人当たりの平均収益は、世界最大手のzynga社の約18倍。日本市場が特殊なのか、海外市場が未開拓なのか――。DeNAの守安功社長は9月の記者会見でこう話した。

「現在、世界のソーシャルゲーム市場は約4000億円。その半分が日本。今後、市場は全世界で2兆~3兆円規模に成長するとみている。その際は家庭用ゲームソフト市場と同じように、国内市場が15%近くを占めることになるだろう」

これは日本市場の平均収益をさらに高めつつ、同レベルの収益は海外にも展開可能だという楽観的な予測に基づいている。大和証券の白石氏はいう。

「海外でのハードルは高い。通信環境は日本ほど恵まれず、携帯機器からの課金には抵抗感も根強い。ライフスタイルを考えれば、モバイルでそこまでやりこむ人はいないのではないか。実績を確認できるまで容易に成功を予想はしづらい」

ソーシャルゲームが活況を呈するなかで、家庭用ゲームは不振に喘いでいる。エンターブレインの調査によると、10年の家庭用ゲームの市場規模は4936億円。ピークだった07年に比べて3割近く減少している。このためゲーム各社はソーシャルへのシフトを進めている。なかでも成功事例といえるのがコナミだ。10年9月にグリーで開始した「ドラゴンコレクション(ドラコレ)」は400万人超の会員を集め、「人気ランキング」の1位を続けている。

コナミは11年4~6月期に、売上高261億円のうちソーシャルが78億円と77億円の家庭用を上回り、同社最大の稼ぎ頭になった。グリーとモバゲーで提供されている10タイトルで、同期に販売されたゲームソフト276万本の売り上げを上回ったことになる。営業利益率も23.2%と前年同期に比べて13ポイントも向上した。

コナミデジタルエンタテインメント広報室の古谷寿実男統括マネージャーは「ビジネスモデルが変わった」と話す。

「これまでのように完成品を出そうとすれば間違える。まずは出してみて、それから改良を続ける。ソーシャルゲーム市場のさらなる成長に期待している」

※すべて雑誌掲載当時

(ロイター/AFLO=写真)