問題が「儲かる原発」にあるにもかかわらず、マスメディアが続々とこれを報じ始めた結果、この会計方式そのものが“悪法”とされつつある。

10月3日、東京電力の経営を調査している政府の第三者委員会は、東電がこの10年間、計6000億円を上乗せした原価で算定した電気料金を徴収し続けてきたことを明らかにした。原価の上昇に応じて利潤が増える総括原価方式の露骨な悪用である。

この報告を受けた枝野幸男経産相は9日後の12日、現行制度を見直すための有識者会議を新設する考えを述べた。その翌日、今度は宇部文雄東北電力副社長が「国から厳しい査定を受けた中での原価だ」と経産省の責任をほのめかすような発言で即座に応戦した。

注目すべきは枝野氏の本気度だ。改革派官僚として、その去就が注目された古賀茂明氏の人事を経産省上層部の手に委ねた枝野大臣には、「事実上、霞が関の改革派を見殺しにした」(同省の若手官僚)という“実績”がある。今回こそ委員の選定で言葉通りの改革意思を反映させられるか否か。国民だけでなく、東電に対する数多の監督不行き届きと実質的な“主犯”を問われるべき経産省も、水面下で委員バランスの演出に神経を集中しつつ、表舞台の成り行きを息を潜めて見守っている。

今、多くのメディアが電気料金を算定する、この特殊な会計制度「総括原価方式」(以下「総括原価」)を問題視している。原子力発電を維持・推進し続ける電力会社が、総括原価で原発コストを電気料金に反映させていることが、もはや公知となったからだ。

この会計方式でコスト上昇に見合う途方もない金を得た東京電力は、その金で多数の不動産を買い込み、信じられないような金額の広告宣伝・渉外費をメディアに流し込み続けるなど、桁外れの資産蓄積と報道機関の籠絡に狂奔してきた。その放漫経営が金権主義を招き、それが今回の原発事故を引き起こす遠因にもなったことは、「東電のウラ側、原発の儲かるカラクリ」(http://president.jp/articles/-/1366)で明らかにした。

今回の原発事故や原発推進の背景に、総括原価という“打ち出の小槌”が存在していたことを指摘し、詳しく論証したマスメディアは、少なくともこの6月初旬までは一つもなかった。そのため、東電の原発事故と総括原価の関連を浮上させたこの記事はネットユーザーの鋭いアンテナで一気に拡散し、新聞やテレビもこれに追随。その流れが今回の第三者委員会報告と枝野経産大臣の発言を促した。