――よいことのように思えますが、このような形態でどんな問題があったのですか?

グループ内のレベルにバラツキが生じていました。国によって、あるいは同じ国であっても、たとえば税務とファイナンスといったように、提供するサービスによって組織が異なるため、レベルに差が出てしまっていたのです。このような状態では、グローバル化が進むクライアントに良いサービスを提供することはできません。

そのため、私たちは常にこれら独立した組織の方向性を一つにまとめることができるのか、あるいはできるとしたらどのようにすればいいのか、という課題に挑戦してきました。その一つの答えがAs Oneです。本ではAs Oneフラッグシッププロジェクトに2年かけたと書きましたが、それは一致団結した集団行動を体系的に整理し、理論化するのに要した期間のことで、「組織におけるリーダーシップはどうあるべきか」というテーマに対して、私たちは1990年代から取り組んできました。As Oneとは、私たちが20年近くかけて自分たちの組織で議論をし、試行錯誤してきた、その過程を体系化した集大成なのです。

――デロイトのように、グローバルに展開し、しかもそれぞれ独立した組織を一つの方向にまとめていくというのは、かなり難しいのではないでしょうか。

そうですね。簡単なことではありません。でも、その作業は必須でした。というのは、クライアントが最終決定する要因というのは、エモーショナルなリレーションをいかに提供できるか、日本的な言い方をすれば、固い絆を結んでいるかにかかっているからです。しかし、私たちの内部にエモーショナルなリレーションがなければ、クライアントに提供することはできません。

そこで、この課題を解決するために、1990年代からデロイトでは、「グローバルなお客さまをデロイトのお客さまとしてケアする」という壮大な取り組みを始めました。クライアントを、「わたしのお客さま」ではなく、「デロイトのお客さま」として扱う、ということです。

この取り組みの中で改めて気づかされたことは、同じ「デロイト」というブランドでありながら、私たちの組織は完全な縦割りだったということです。国の違いだけではありません。業務でも同じことが起きていました。たとえば、監査法人としての業務は同じでも、国が違えば当然ながら法律は違いますから、実務は変わってきます。そのため、どうしてもクライアントは「わたしのお客さま」であり、「デロイトのお客さま」ではなかったのです。