優秀な女性営業職が会社を去った理由

<strong>住友生命保険社長 佐藤義雄</strong>●1949年、福岡県生まれ。九州大学卒業後、住友生命保険入社。営業畑と運用畑を歩み、2007年から現職。
住友生命保険社長 佐藤義雄●1949年、福岡県生まれ。九州大学卒業後、住友生命保険入社。営業畑と運用畑を歩み、2007年から現職。

入社してすぐ、ある中小企業に一人で食い込み、ほぼ独占的に契約をいただいた女性営業職がいました。むろん誰にでもできることではなく、会社も将来を嘱望していました。ところが一社に依存して、新規開拓やお客様から紹介を広げるやり方を磨いてこなかったため、成績が頭打ちに。自信を喪失し、結果的に会社を去りました。

保険業界では、これと似たケースがよく起こります。新商品が出たとき、自分に近しいお客様なら、いきなり商品紹介から入っても通用するかもしれません。しかし、新規開拓は保険に関心がないお客様がほとんど。まず興味を持っていただくために、お客様の人生や保険について一緒に考えるコンサルティング的姿勢が不可欠です。ところが、親戚や友人など自分のバックグラウンドと商品のみの説明で成績を伸ばしてきた人は、成功体験が足かせとなって手法をうまく切り替えられない。だから人脈が枯渇した途端伸び悩むのです。

また、心の問題が成績に悪影響を及ぼすことも多々あります。営業という仕事は契約をいただくより断られる回数のほうが多いもの。気持ちが前向きでなければ長続きしませんが、家庭や職場の人間関係でトラブルを抱えていると、仕事に対するモチベーションまで低下させてしまうのです。

どちらにせよ、優秀な社員の成績が落ち込んだときには、必ず具体的な原因があります。それを探らず、「手抜きだ」「やる気がない」と部下を非難しても事態は変わりません。原因を本人に気づかせたり、解決の糸口を示すことが上司の役目なのです。