30代半ば~40代半ばの就職氷河期世代にはやむをえず非正規で働く人が多い。政府はその対策として、6月に「彼らの世代の正規雇用を30万人増やす」ことを閣議決定した。どのような人材が正社員になりやすいのか。日本総研創発戦略センター スペシャリスト・小島明子さんが報告する――。

政府「就職氷河期世代の正規雇用を30万人増やす」は実現できるか

「正規雇用を30万人増やす」――。

6月に閣議決定した内閣府の「経済財政運営と改革の基本方針2021」では、就職氷河期世代(30代半ば~40代半ば)への雇用支援などを通じて、この目標値を掲げています。

ここ数年は、氷河期人材の支援の一環として、氷河期人材を公務員として採用する動きや、マッチングイベントなどを通じて、人手不足である多くの中小企業への雇用支援を促す動きも出てきていますが、「30万人」を達成するためには課題は多いと言わざるをえません。

筆者が属する日本総合研究所では、令和2(2020)年度 経済産業省中小企業庁委託事業 地域中小企業人材確保支援等事業「氷河期世代人材活用促進等事業」報告書(以下、「報告書」と記載)を2021年3月にまとめました。

この報告書を踏まえて、氷河期人材が活躍するために今後どうすべきか考察していきます。

1:“不本意非正規”の就職氷河期世代の4つのタイプ

今回、国(政府)を挙げて支援の対象となっている氷河期世代といわれる世代は、大学卒業後に希望する就職ができず、現在も不本意な非正規で働く40歳前後の人々が対象となっています。内閣府によると、大学(学部)卒業者の場合、就職氷河期の就職率が69.7%(その期間を除く1985年~2019年の平均は80.1%)と平年よりも10%ポイント以上低下しています。

以前にプレジデントオンラインで書いた「アラフォー女性が『私たちだけ辛酸』と話すワケ」では、とにかく就職が厳しい時代であったため最初に内定をもらえた企業にそのまま就職をした方や、就職しやすい業界を考えて就職した方、総合職ではなく一般職でなんとか就職した方など、希望する就職先に就職できなかった方々の当時の状況を紹介しました。

報告書によれば、現在、こうした不安定な就労状態にある“不本意非正規”の就職氷河期世代の人々は、正社員化への意欲と保有スキルの高さを軸に、4つのタイプに分けられることが示されています(下記のタイプ別名称は、報告書とは関わりなく、筆者が今までの経験や知見を基に明記したものです)。

①スーパー派遣タイプ

正社員になることへの意欲と保有スキルが高い方々です。大企業などで、専門性の高い業務を経験し、スキルやキャリアに一定の強みがある方々です。

②一般派遣・フリータータイプ

一定の就労経験はあるものの単純作業等への従事がメインの方々です。特筆した専門スキルや経験がないため、スキルやキャリアに自信を持てず、正社員になることにも消極的な方々です。