滋養強壮の薬酒、養命酒の工場は長野県駒ケ根市にある。工場には見学施設「健康の森」が付属しており、そこに働く20人ほどの女性は毎朝、自分たちだけで朝礼を行っている。

朝礼は8時40分からの10分程度。

・ラジオ体操

・スピーチ─もてなし、接客について、思ったことを自由に話す。

・見学者数などの情報を共有─その日の見学者数などを全員が把握しておく。多い日には800人がやってくる。

・問題(クイズ)─養命酒に使われている生薬の種類などをテーマに、担当が「問題」を出す。知識の確認につながるものだ。

・「健康の森8カ条」の唱和─「私たちは常に笑顔と会話と我慢を忘れません」といった、手作りの「もてなしルール」を唱和する。

「健康の森」を担当する施設運営事業部の丸山明彦副部長は「健康の森8 カ条の唱和を大切にしています」と語る。

「8カ条の表現は洗練されていないところもあります。でも、彼女たちの実感がこもっている。よそいきのルールでなく、自分たちが確実に実行できることだけを言葉にしました」

日替わりで一人がスピーチ、クイズ出題、「8カ条」唱和のリードを担当する。

日替わりで一人がスピーチ、クイズ出題、「8カ条」唱和のリードを担当する。

朝礼で理念などを唱和する会社は多いが、熱を入れて唱和している社員は決して多くはない。だが、ここのスタッフは8カ条を大声で堂々と唱える。

丸山氏はこう評価する。

「みんなで話し合って作ったものだからでしょう。いくらすばらしい表現でも、借り物には愛着がわきません。健康の森8カ条は毎日の仕事の中から出てきた、実用的な言葉なんです」

「健康の森」の朝礼内容は他の企業とほぼ同じだ。だが、働く者が自主的に考えた「健康の森8カ条」を加えたことで内容は濃くなり、参加意識が高まる。朝礼の内容をバラエティ化することもいいが、中身を一から考え直すことも朝礼を充実させる方法だろう。

(木下徳康=撮影)