東京オリンピックの開会式をめぐっては、演出チームの不祥事が次々と明るみに出て、今年だけで3人が辞任や解任に至った。作家の岩井志麻子さんは「私も2年前に、韓国人への差別発言で炎上したことがある。当時は非難する人たちを逆恨みすることもあったが、あるひと言をいただいて、心底反省するようになった。ときには手を差し伸べることも重要だと思う」という――。
落ち込んだ女性
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開幕式関係者の辞任劇を見て思ったこと

東京オリンピック開会式にまつわる一連の「出演者や関係者、主催者の過去の悪行、愚行による降板、辞退、その糾弾と謝罪と論争」を見たとき、一視聴者としては「あれはひどすぎる」と深く考えずに思いました。

ですが、普通のオバサンとしてではなく、作家、タレントの端くれ、つまり表現者としてメディアに出ている立場を顧みたとき、違う感情が沸き上がりました。

過去の酷いいじめ自慢を暴露され辞退に至ったミュージシャンのことを見て、私も大いに反省と後悔と謝罪をせねばならぬと、改めてうなだれたのです。その上で、こう考えたのです。

「様々な被害の当事者、被差別の属性を持つ人達。その人達が加害者や暴言を吐いた人、差別した人を絶対に許さない、というお気持ちは尊重します。何が何でも許せ、水に流せ、などというつもりもありません。

ただ、その上で、糾弾される側の人を誰か一人でも許す、一緒に頑張ろう、といった言葉をかけてあげてほしいなと思っています。

今回の件と同列には語れないですが、たとえば決められた刑期を務めあげて出所した人や、堅気になりたいと反社会的組織を抜けた人についても、いつまでも罪人呼ばわり、反社扱いし、更生したくてもさせないなんて、今度はこちら側も差別者や加害者になってしまうではありませんか」

同様の私見をテレビに出演した際に述べましたし、それがネットニュースにもなったので、多くの方に賛否両論いただきました。