韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の任期が1年を切った。政権発足後、日韓関係は「戦後最悪」と評されるまで悪化した。次の大統領はこの状況を改善できるのだろうか。日韓関係を長年取材してきたジャーナリストの赤石晋一郎さんは「3人の有力候補のうち、日本が一番警戒すべきは『韓国のトランプ』だ」という――。
韓国大統領選/韓国の李在明・京畿道知事
写真=時事通信フォト
2021年7月1日、ユーチューブで来年3月の韓国大統領選出馬を表明する京畿道の李在明知事(ユーチューブより)

文政権批判ばかりで評判が落ち始めた尹錫悦前検察総長

韓国世論調査機関リアルメーターの最新調査(7月26~27日調査)によると、次期大統領候補の2強となっているのが尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検察総長と、李在明(イ・ジェミョン)京畿(キョンギ)道知事である。尹前総長の支持率は27.5%、李知事は25.5%となっており2強が接戦を繰り広げていることがわかる。

尹錫悦前検察総長(60)は、検察官時代に朴槿恵(パク・クネ)元大統領への捜査を行い、文政権下では収賄罪などで起訴された曺国(チョ・グク)元法相への捜査指揮を執ったことで知られるカリスマ的な人物だ。「公正」であることを旨とし、「私は人に仕えない。法に仕えるのみだ」との言葉で知られる硬骨漢として国民人気が高い。

時の政権に忖度そんたくせず権力におもねらない捜査を行ったことで、「検察改革」を推進しようとした文政権と激しく対立して検察総長の座を去り、次期大統領選への出馬を表明したのだ。

「早い段階から次期大統領候補の呼び声が高かった尹氏ですが、いざ政治家として見るとその言葉は文政権批判ばかりで、あるべき国家観に欠けるという評価がメディア内で出始めています。検察官・官僚としては素晴らしい人物だが、政治家としては未知数ではないかというのです。保守候補として立候補するにもかかわらず、保守系最大野党「国民の力」への入党を7月末までためらっていたところも政治家としての迷いが見えます。

また『公正』を看板にしているにもかかわらず、7月2日に義母が詐欺罪などで実刑判決を受けたことも大きなマイナスになっています」(韓国人ジャーナリスト)

高い前評判がありながら、支持率が伸び悩み気味の尹錫悦氏だが、日韓関係については現実的な考えをしていると言われている。