「新人でもわかる」がキーポイント

「無印良品」の店舗では、バックルームに必ず「MUJIGRAM」と呼ばれる業務マニュアルが常備されている。一般に想像される店舗業務マニュアルとは、ある点で大きく違う。「MUJIGRAM」は全13分冊、合計1683ページに及ぶ膨大なボリュームなのだ。

その内容は、店舗におけるほぼすべての業務を網羅している。

これが「MUJIGRAM」全13冊のタイトルだ!
図を拡大
これが「MUJIGRAM」全13冊のタイトルだ!

「売場に立つ前に」で始まり、「店内業務」や「売場作り」などの通常業務、さらには「労務管理」や「危機管理」といったマネジメント系にまで及ぶ。

店舗業務で「知らない」「困った」と感じることがほぼ網羅されており、各店舗では日々の業務の中で自然に活用され、なくてはならない存在になっている。店長不在時の判断材料や、未経験の業務に携わる際の心強いバイブルとしても活用されているのだ。

実は無印良品は2000年度、突如既存店売り上げが前年割れの事態に陥った。事業運営を行う良品計画の01年2月期は、1995年の上場以来初の減益決算に。急成長がつくり出した
「無印神話」は崩壊し、市場では「無印の時代は終わった」とささやかれもした。

しかし、無印復活の任を負ってバトンを受けた松井忠三社長(現会長)の下、良品計画の業績は見事に「V字回復」を果たした。わずか2年で再び増収増益の軌道に乗り、07年度には売り上げ、利益ともに過去最高を更新したのだ。そのV字回復を遂げた要因を理解するうえで、この壮大なマニュアルの存在は非常に重要である。

松井社長が行った改革の要点は、全業務の「見える化」による「仕組み化」だった。