ミャンマー情勢が緊迫している。欧米諸国が経済制裁などに動く一方、日本政府の動きは鈍い。東京外国語大学の篠田英朗教授は「ミャンマー問題は、さまざまな日本の外交問題を照らし出している。日本の外交スタイルは世界標準からかけ離れている」と指摘する――。
在日ミャンマー人とその支援者による東京都内でのデモ。(2021年2月14日)
写真=AP/アフロ
在日ミャンマー人とその支援者による東京都内でのデモ。(2021年2月14日)

強調される「独自のパイプ」とは何なのか

緊迫するミャンマー情勢に直面し、歯切れの悪い日本外交の姿が露呈している。「日本はミャンマーに独自のパイプがある」といった、言語明瞭・意味不明の言説が頻繁に語られている。しかし2月1日のクーデター勃発から3カ月がたち、これらの言説に実行が伴っていないことは明らかになってきている。そもそもこれらの言説は、具体的にはいったい何を意味しているのか。

4月9日に、駐ミャンマーの15大使が共同声明の形で公表したミャンマー軍を非難する共同声明に、日本は加わらなかった。アメリカの同盟国で加わらなかったのは、日本と、エルドアン大統領のトルコやドゥテルテ大統領のフィリピンくらいであった。

「日本は軍の利益になる援助を止めろ」、といった国内外からの声に対して、日本の外交当局が「対応は検討中です」とだけ述べて、あとはじっと無言で耐え続ける、という図式が続いている。茂木外相が「北風がいいか、太陽がいいか」といったナゾナゾのようなことを国会答弁で述べたことは、日本の奇妙な外交スタイルとして国際的にも広く報じられた。

こうしたすっきりしないやり取りの中で頻繁に語られているのが、「パイプ」という謎の概念だ。日本の外交当局が「パイプ」なるものに異様なまでのこだわりを見せている。しかしそれが何なのかは、一切語ろうとはしない。

いったい「パイプ」とは何なのか。

ここでは「金」の面から、日本が持つ「パイプ」について考えてみたい。