変革を先導する部門横断のグループをつくる

変革活動のためには、さまざまな部署、さまざまな階層から寄り集まった、スキルや強みが異なる人たちのグループをつくる必要があるとコッターは言う。これは変革に意欲を持ち、それを実行するためにひと肌脱ぐ気のある人の集団でなければならない。チームが古い戦略に戻ったら、変革を推進できる人びとを呼び集めることを考えよう。改革に熱意を持つ人を選び、チームを前進させるための実質的な仕事を割り当てるのだ。

社員が自分たちに求められていることと、会社の利益とのずれに気づいているために後退が起きることもある。変革を先導するマネジャーは、前進を阻むおそれのある障害を見きわめる必要がある。効果的な変革のためには、おそらくITシステムや報酬モデル、業績の管理基準を変える必要があるだろう。機能不全に陥っているチームや協働に消極的な文化は往々にして最大の障害になる。チーム内の力関係やマネジャーの行動も、障害となるおそれがないかどうか検討しよう。君たちが新しいやり方で仕事をするのを阻んでいる要因は何かと、部下に繰り返し尋ねよう。

新しい戦略は非効率的だとみなが思っているときも変革は行き詰まる。「どれほどよい企業人であっても、機能しない仕事をやる気にはならない」と、コッターは言う。成功体験を共有することはきわめて重要だ。実質的に前進していることがわかる成果を見つけ、それをチーム全体に知らせよう。

緊急の課題が出ても辛抱強く続ける

古い習慣を打ち破るのはたしかに難しい。だが、新しい戦略を成功させるためには、日々の仕事のやり方を変えることが重要だ。「新しいやり方をとり入れて、それが習慣になるまで維持しよう」とコッターは言う。緊急のビジネス課題が出てきたら、新しい戦略への集中力が簡単にそがれるおそれがある。途方もないプレッシャーにさらされると、個人もチームも古い戦略に心地よさを見出すものだ。これを避ける一番よい方法は、新戦略に集中することを誓い、それに責任を持つことだ。「緊急性が低下し始めたと判断したら、すぐに戦略に戻ってそれにたゆみなく取り組む必要がある」と、コッターは言う。

より差し迫っていると感じる課題に取り組むため、新戦略への関心をそらすことは、致命的な誤りになることがある。新しい戦略が必ずしも組織に役立つわけではないなら、それは間違った戦略かもしれないのだ。

(翻訳=ディプロマット)