初動対応の高評価が一転、苦境の政権与党

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大(パンデミック)が始まって、すでに1年以上が経つ。欧州では、長期政権ほどその初動対応が評価され、与党の支持率が上昇する現象が見られた。その端的な例がオランダとドイツであるが、昨年11月以来の行動制限が今春まで長期化していることを受けて、与党への向かい風が強まっている。

ブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)首脳会議で、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(左)とオランダのマルク・ルッテ首相
写真=EPA/時事通信フォト
ブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)首脳会議に出席するドイツのアンゲラ・メルケル首相(左)とオランダのマルク・ルッテ首相(右)=2020年10月2日

3月15日から17日にかけて、オランダで下院総選挙が行われた。中道右派の与党・自由民主国民党(VVD)は、ルッテ首相による初動対応が有権者に評価され、それまで20%近くまで落ち込んでいた支持率が一時40%近くにまで回復した。しかし行動制限が年明け以降も長期化する中で、30%前半まで支持率を落とすことになった。

総選挙に先立ちルッテ首相は、1月15日にアレクサンダー国王に辞表を提出、内閣を総辞職させるとともに自らは暫定首相にとどまる選択をとった。税務当局が過去10年の間、約2万世帯に対して育児手当の返納を誤って命じたことに関する責任を取ったかたちだが、その実は3月の総選挙を念頭に置くパフォーマンスだと言われていた。

即日開票の結果、150議席の定員のうちVVDが34議席を獲得、第1党の座を死守したが、前回2017年から議席を1増やすに留まった。続く第2党には、中道左派の民主66(D66)が議席を5増やし24議席を獲得と躍進し、前回第2党であった極右政党・自由党(PVV)は議席を3減らして17議席に留まり、第3党に沈んだ。

多党制の国であるオランダでは、第1党が首班となって連立政権が組まれる慣例がある。狙い通り総選挙で勝利したルッテ首相は、すでに11年にわたって首相を務めている。このまま続投が決まれば、オランダで最も在任期間が長い首相になる。しかしながら、選挙からすでに1カ月近くが経とうというのに、連立協議は難航が続いている。