テレビ朝日の番組「報道ステーション」の若者向けCM動画が「女性蔑視」「若い女性をバカにしている」と大炎上しました。ところが、当のZ世代の若者たちの中では、このCMを問題視していない人も多いようです。「ジェンダー問題がすでに解決しているような誤解を招く点は問題だが、差別表現は感じられなかった。それよりも『若者=頭が悪い』という描き方のほうが問題では」。マーケティングアナリストの原田曜平さんが緊急開催したオンライン座談会で、Z世代の若者たちが語ってくれました──。
テレビ朝日
写真=時事通信フォト
テレビ朝日=2020年04月03日、東京都港区
【座談会参加者】
森 慧太郎くん/青山学院大学地球社会共生学部3年生。
齊藤 龍星くん/早稲田大学政治経済学部2年生。
安田 愛麻さん/慶應義塾大学総合政策学部2年生。
鈴木 星良さん(仮名)/桜美林大学ビジネスマネジメント学群2年生。
坂本 あかりさん(仮名)/上智大学総合グローバル学部1年生。
軽込 敦也くん/早稲田大学社会学部2年生。
工藤 慶人くん/一橋大学経済学部2年生。
末石 エレンさん(仮名)/立教大学文学部3年生。
山田 花子さん(仮名)/慶應義塾大学総合政策学部2年生。
矢追 耕太郎くん/早稲田大学政治経済学部2年生。
青野 弘基くん/専修大学経営学部経営学科1年生。

何を言いたいのかよくわからないCM

【原田】今回は、報道ステーションの若者向けCMが炎上した問題について、皆の意見を聞きたいんだ。まず、最初に見たときの印象はどうだった?

【森くん】最初に見たときは、何を言いたいのかよくわかりませんでした。

【工藤くん】僕も最初は何が言いたいのかわかりませんでしたね。何回か見直してみてようやく意図が何となくわかりました。今の若い人はあまりニュースを見なくて社会のことにも関心がないから、そこを利用して「報道ステーションを見れば社会に詳しくなれる」って言いたいんだろうなと。

【原田】なるほど。 若者のテレビ離れが叫ばれて久しくなり、ようやくテレビ局も若者を取り込もうと必死になり始めた。特に若い女性は報道番組を見ていない率が他の層に比べると圧倒的に高い。かつ、マーケティング戦略上、若い女性に見てもらうことを好む、若い女性向けの商材を持っている広告主も多いし、SNSを最も利用しているのは若い女性なので、影響力、拡散力という観点でも彼女たちに見てもらうことは大きい。 だから、若い女性をターゲットにした広告を作る、という制作意図自体はよく分かるけど、ジェンダー論以前に、若者としては広告として何が言いたいのか分かりにくかった、ということなんだね。

このCMが最もたたかれてしまった点として、若い女性が「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的に掲げてる時点で時代遅れって感じ」などと話している部分がジェンダー論の観点から問題視されているんだけど、このことについては、皆はどう思った?

炎上している理由がわからない

【森くん】性差別みたいなものは正直あまり感じ取れなかったです。単純に若者の普段のリアルな会話を取り上げたのかなっていう印象でしたね。ただ、最後に「こいつ報ステみてるな」ってテロップが出るんですが、「こいつ」にはちょっと引っかかりましたね。上から目線を感じました。

【工藤くん】友達との会話で、主人公の女の子が社会で起きていることに目を向けている感じのセリフがあって、その話を聞いている相手が「こいつやるな」っていうノリですよね。僕は「こいつ」には「ああ、友達との会話なんだな」って思っただけで、違和感も嫌悪感もなかったな。炎上している理由もわからなかったです。

【原田】こんな感じの会話を若者たちは普通にしてる、ってことなのかな。ただ、「こいつ」というのは多分彼女のお友達のコメントなんだろうけど、それが分かりにくく、番組側が若者を「こいつ」と言っているように感じる若者もいた。一方で、友達の意見だと読み取った若者は違和感を持たなかった、ってことなんだね。まあ、前述したように、ジェンダー論以前に、そもそも友達のコメントという構造自体が分かりにくいって部分はあるのかもしれないね。