通常価格で飲み物を買うだけで、代金の一部を寄付できる募金型自動販売機。飲料大手ダイドードリンコでは、このタイプの自販機を用いた社会貢献を提案する「SDGs営業」で成果を上げている。神戸大学大学院の栗木契教授が解説する――。
トクメン国際空港の窓に貼られた17のグローバルゴール
写真=iStock.com/Susie Hedberg
パナマのトクメン国際空港の窓に貼られた、SDGsの目標を描くステッカー(2018年10月18日)

「SDGs」が課題解決型営業のチャンスに

ここ数年、目にする機会の増えた「SDGs(持続可能な開発目標)」。よさそうな概念だが、これが営業の武器になるか。大阪市に本社を置くダイドードリンコでは、一方的にならない課題解決型営業のなかで、SDGsを販売機会の拡大に直結させていた。

SDGsは全地球規模の社会課題として国連が採択した、貧困の解消、飢餓ゼロ、気候変動対策や海洋資源の保全など、17の目標である。2030年までの達成が目指されている。気候変動から海洋資源、貧困から健康へと、課題の範囲は広い。そのもとにあって企業も、社会課題に対する幅広い責任を果たすことが求められている。

しかし、こうした企業の社会責任への対応が、本業の成果に直結すると認識されていたかというと、必ずしもそうではない。企業の社会責任への対応は、本業で上げた利潤を社会に還元する活動との位置づけにあることが少なくなかった。

そこに新たな変化が生じはじめている。

ダイドードリンコは、缶コーヒーを主力とする飲料メーカーである。国内清涼飲料の売り上げでは業界第7位で、業界のトップメーカーのような交渉力を、コンビニや量販店などの大手小売チェーンに対しては持たない。

そこでダイドーは自動販売機の設置場所を開拓し、直販ルートを確保する営業に活路を見いだしてきた。現在のダイドーは、自動販売機の国内設置台数で、コカ・コーラ、サントリーに次ぐ第3位の地位にある。