ウクライナ首相 ユリア・ティモシェンコ
1960年生まれ。ウクライナのドニエプロペトロフスク国立大卒。96年国会議員。2005年に首相に就任したが7カ月後に解任。昨年9月の議会選を経て、首相に返り咲いた。長女は英国在住。47歳。


 

「私は権力を求めない。国を復活させる政策を提案するだけだ」。旧ソ連圏のウクライナに親欧米政権を樹立した2004年の「オレンジ革命」の立役者。しかし、国民的な人気を背景に、当時の盟友だったユーシェンコ大統領との権力闘争は今年に入って一層激化、最高会議(議会)解散に発展した。来年暮れにも行われる次期大統領選で、両氏の激突は必至だ。

革命当時、ブロンドの髪を編み上げたウクライナ風の髪形で「ウクライナのジャンヌ・ダルク」ともてはやされた美貌。05年には、ウクライナの女性として初めてファッション雑誌「ELLE」(ウクライナ版)の表紙を飾った。

19歳で結婚。大学卒業後、ロシアなどからのガス輸入を手がける有力企業などを経営、実業家として名声を築いた。1996年に政界入り。99年に副首相となったが、01年には実業家時代の不正蓄財疑惑が浮上、逮捕されたこともある。

ロシアと北大西洋条約機構(NATO)加盟国の間に位置し、ロシア黒海艦隊にセバストポリ基地を貸与しているウクライナは、ロシアと欧米の覇権争いの最前線。NATO早期加盟を掲げるユーシェンコ大統領に対し、本来は親欧米派のティモシェンコ氏は最近、ロシアに傾斜し始めた。

ロシアのプーチン首相とはたびたび会談。グルジア紛争ではロシアへの非難を避け、次期大統領選でロシア側の支援を取り付けた見返りでは――との憶測を呼んだ。モスクワでティモシェンコ氏当選に向けた「裏選対」の会合が開かれたとも取りざたされている。

世界的な金融危機はウクライナも直撃、国際通貨基金(IMF)が支援に乗り出す方向だ。政争のあおりで経済混乱の長期化も懸念される中、ティモシェンコ氏の動向に注目が集まる。

(AP Images=写真)