「アップルが韓国・現代と電気自動車で提携」に色めき立つ日本勢

「米アップルがいよいよ乗り込んできたか」――。年が明け、米国のアップルが韓国・現代自動車と電気自動車(EV)で提携するとの報道を受けて、日本国内の自動車メーカーの幹部は異口同音にこう漏らす。

米アップルは既存の自動車メーカーの車両を使い、自動運転の実証実験をカリフォルニア州などで数年前から実施している。ただ、どういう形で自動車産業に参入してくるのかは、日本勢にはよくわからなかった。

2019年5月、カリフォルニア州サンタクララで撮影されたアップルの自動運転のテストカー。トヨタのレクサス車にセンサー類を取り付け、公道試験を行っている。
写真=dpa/時事通信フォト
2019年5月、カリフォルニア州サンタクララで撮影されたアップルの自動運転のテストカー。トヨタのレクサス車にセンサー類を取り付け、公道試験を行っている。

しかし、現代自動車が1月8日に出した声明でアップルと交渉しているのを認めたことで一気にトヨタ自動車やホンダなど国内の自動車メーカーは色めき立った。「資金力とブランド力を備えるアップルのEV進出が実現すれば、既存の自動車業界の勢力図は一気に入れ替わる」(大手証券アナリスト)からだ。

年明け前後に韓国メディアが「アップルが2027年の自社ブランドEVの発売に向け、車両や車載電池の生産などで現代自動車グループと協業する交渉を進めている」と報道し始めると、現代自動車は「アップルは現代自動車をはじめとする世界のさまざまな自動車メーカーと協議中であると理解している」とのコメントを発表した。

アップルが進める「個人の好みに合ったクルマ」の開発

アップルはかねてモビリティー分野への進出に意欲があるとみられてきた。同社内では、約5000人が自動運転技術の開発に携わっている。2017年ごろから本社のあるカリフォルニア州内で公道走行試験を始め、2019年には米スタンフォード大学発の自動運転スタートアップも買収した。

アップルはiPhoneなどの開発を通じて半導体やセンサー、電池、人工知能(AI)などの技術を蓄積している。これらハードの技術にiPhoneやパソコンの「iMac(アイマック)」などから得られる個人データを融合して「個人の好みに合ったクルマ」の開発を進めている。

例えば、個人の運転履歴に合うエンジンやブレーキ、サスペンションなどの調整といった車両の制御のほかに、社内の空調や流れる音楽、到着地に向かう沿道での店舗情報の提供などもドライバーによって変えることもできるという。「いろいろなアプリをスマホの中に取り込んで自分仕様のスマホを作っていくのと同じように、自分仕様のクルマがアップルによってできる」(アップル関係者)。まさに「走るスマホ」の誕生を目指す。