「異端審問」の構造とほぼ同じ

キャンセル・カルチャーという言葉には様々な定義があるが、要は1つの発言や物の見方、つまり表現や意見などを理由にボイコットをしようとするものだ。

ゴム製のアヒルを群衆の中から外に立っています。
写真=iStock.com/Eoneren
※写真はイメージです

最近では、ナイキやDHCに対してキャンセル運動が発動された。

といっても、DHCの会長が排外主義的な意見の持ち主であることは有名で、活動した人がその商品を買っていたとは考えにくい。ボイコットは単に物を買うのをやめることだけではなく、発言を撤回に追い込んだり、公的空間から排除することを目的にしている。

現代ではSNSのハッシュタグ#が人々をつなげ、1つの標語でもって圧力を形成することができるため、努力せずにキャンセル運動に参加できるようになっている。そして、仮にごく少数の人しか参加していない場合でも、それが向けられる企業や個人には大きな圧力として感じられる。

キャンセル・カルチャーは「異端審問」の構造とほぼ同じであり、それが砂粒のような個人の集合体によって行われているために、暴力性がぼやかされている。

新教と旧教の対立の頃から、人間がやっていることは大して変わらない。