バブル崩壊後の雇用環境の厳しい時代に社会に出た30代半ばから40代を中心とした「就職氷河期世代」。国の試算では非正規雇用など不安定な雇用状況にある人が全国で約54万人いる。しかしそれだけではない。日本総合研究所の下田裕介氏は「就職氷河期世代自身だけでなく、彼ら・彼女らのきょうだいも困難を抱える恐れがある」という——。

※本稿は、下田裕介『就職氷河期世代の行く先』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。

暗い寝室のベッドの上で頭を抱える男性
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きょうだい自身に余裕がないと支えられない

就職氷河期世代は、経済的な理由で結婚や子を持つことをあきらめざるを得ないケースが少なくないことを踏まえると、自分が高齢を迎えた際に支え手となることが考えられる配偶者や子どもといった家族がそもそもいないという事態もありうる。そこで支え手になる可能性として挙げられるのは、自身のきょうだいである。

しかし、きょうだいの人数はかつてと比べて減っている。国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」によれば、結婚持続期間15~19年の初婚同士の夫婦を対象にした最終的な平均出生子ども数をみると、1940年には4人を超える子どもを持つことが一般的だったが、その後、1970年代前半にかけて減り続け、2000年代前半までは2人程度と横ばいで推移している(図表1)。就職氷河期世代の親がもうける子どもの数、すなわち、就職氷河期世代のきょうだいはおおむね2人が平均的であるといえる。同世代では、一人っ子というケースも珍しくないだろう。

夫婦の最終的な平均出生子ども数

また、少ないながら、きょうだいがいる場合でも、助けによって就職氷河期世代が抱える問題が好転するかというと難しい面が少なくない。きょうだい自身に余裕がなければ、例えば親を頼って同居により生活を送る就職氷河期世代にあたる別のきょうだいを支えるどころか、共倒れする恐れも十分に考えられるからだ。