人生の残酷なまでの仕業や悲観を写し出す
『ニュー・シネマ・パラダイス』

年老いて哀感に咽むせぶことがある。『ライムライト』はまさにそれ。

チャップリンが演じるのは昔、一世を風靡した芸人。すっかり落ちぶれてしまったものの、若いバレリーナの命を救ったことから、自分もカムバックを夢見るようになる。これを観て感じるのは、ものを表現する人の業とその哀れさだよ。売れながらも途中でだめになってしまうコメディアンには不幸な歴史がいっぱいある。この集大成が『ライムライト』の中にあります。チャップリンは『独裁者』の演説する場面もツーンとくるけど、こっちのほうが切ない。

もっと切ないのは、やっぱり『ニュー・シネマ・パラダイス』だね。

少年・トトは映画が好きで好きで仕方がなくて、映画館に通いつめるうちに、映写技師のアルフレードとの間に友情が芽生える。俺も小2の頃、映画館に行くと「俺がいるときにはタダで入れてやるから」という映写室のお兄ちゃんがいたもんだ。

やがてトトは大人になって映画監督になるんだけど、人生の中にいつも映画があったということでは、俺の生涯と一緒なんだ。過ごした時代もほぼ同じ。映画の冒頭、ライオンの口から映写機の光線が出る場面がある。これは、当時上映されていたMGM製作の映画で、シンボルマークのライオン「レオ」が吼えているパロディなんです。映画好きの人間ならゾクゾクする。ラストの切られたキスシーンの贈りものに思わず拍手と涙。

フィルムの到着が遅れて怒る人や、上映中にストーリーを全部話し、おいおい泣いてるおじさんが出てくるのもいい。信じられないかもしれないけど、昔の映画館には悪役が写ると、俺なんかガキだったので、ミカンをスクリーンに投げつけ、支配人につまみ出された。これだけ血道を上げた時代があったと思うと、ホント胸が熱くなるよな。