準備を通じてチームワークを高める

チームが本当に機能する環境をつくるためには、相手側に会う前に十分な準備と調整、それに内部の交渉を行うことが必要だ。

ロンドン大学経営大学院のランダール・ピーターソン、ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院のクリスティン・ベーファー、それに私の共同研究では、最も適応力のあるチームは、メンバーが徹底的に話し合うことで、チーム内の意見の相違に正面から向き合い、それを解決する効果的な方法を生み出すチームだという結果が出ている。準備を通じて生み出された深い知識は、交渉の席でのより高い柔軟性と創造性につながる場合が多いのである。

オハイオ州立大学フィッシャー経営大学院のロイ・レビスキー教授によれば、きわめて重要な交渉の場合には、交渉に費やす時間の少なくとも2倍の時間を準備に費やすべきだという。
 新たに結成された交渉チームの準備段階は、(1)内容についての議論、(2)メンバーの能力の見きわめと役割分担、(3)交渉の進め方のプラン、の3要素を含んでいなければならない。

(1)交渉の内容について議論する

交渉に入る前に、チームは基本的な交渉内容について意見を統一し、完璧な結束をめざさなくてはいけない。こちらの鎧にひび割れの兆候が見えるやいなや、相手はこちらを分断して打ち負かそうとするからだ。

グループ交渉における準備会議は、その交渉ではどのような問題を話し合うべきかというブレーンストーミングから始めるべきだ。次に、それらの問題に優先順位をつけ、どのようなトレードオフが可能かを検討しよう。

交渉で話し合うべき問題をパッケージ化するにはどうすればよいか。この段階で、チームのBANTA(交渉で合意に至らない場合の最善の案)、留保点、すなわちどこまでなら決裂より合意を選ぶかという最低ライン、および期待値、すなわち考えられる最高の結果について、チームの意見を1つにまとめる必要がある。チームはこれらの重要な限度を指針にして代替シナリオを見つけ、妥当でない情報はないかチェックして、自分たちの想定が正しいかどうか確かめることができる。

続いて、交渉相手について考えなくてはいけない。相手が最も重視すると思われる問題を列挙して、相手の優先事項、BANTA、留保点、期待レベルを推測しよう。チームが大きな効果を発揮するのはこの点においてである。メンバーの知識や能力を総動員しよう。次に、まだ知らない情報で、ぜひ知っておきたいものをリストアップしよう。実際の交渉に入る前につかめないものについては交渉を進めるなかで探り出そう。

最後に、相手に明かしてもよい情報と絶対に明かしてはならない情報についてチームの意見を統一しよう。