組織内の「縄張り」を放置すれば、新しいアイデアは抑制され、業務の重複や分断が起こり、組織を内側から腐らせる。リーダーは、縄張り解体のために迅速かつ断固たる措置をとらねばならない。

縄張りは人間の根深い欲求――自分の仕事にとって不名誉になる情報を抑え込みたい、自分の運命を自分で決定したい、組織にとって重要な存在とみなされたいといった欲求――に基づくもので、あらゆるタイプの組織で生まれてくる。また、個人、チーム、部署、部門、子会社など、企業のあらゆるレベルで出現する。そして、深刻な害を与えるのである。

縄張りは、ひとつには創造性を抑えつける。縄張りを支配している人々は自分の立場を維持するために新しいアイデアを撥ねつけるからだ。それに加えて、縄張りは会社が定めたものとは相容れないプロセス(たとえば、別個の財務報告手順)を設けることによって混乱を引き起こす。

縄張りの支配者が、自分をよく見せようとして自分の担当分野で起きていることについて慎重に選び抜いた情報しか表に出さない場合には、混乱はさらにひどくなる。最後に、縄張りは組織の中の本当に資源を必要としているところから大切な資源を奪い取る。しかも、放っておいたら会社全体を崩壊させることさえある。

リーダーは縄張りを解体するために迅速かつ断固たる措置をとる必要がある。自分のテリトリーを潰そうとする動きにはほとんどの縄張りの支配者が抵抗するだろうが、幹部やマネジャーが決意と規律をもって臨めば、縄張りは首尾よく解体できる。

あなたの会社にはびこっている縄張りをもっとも効果的に打ち砕くにはどうすればよいのだろう。マイクロソフトの元COOで、『The Fiefdom Synd-rome(縄張り症候群)』(Currency/Doubleday, 2004)の著者、ボブ・ハーボルドによれば、あなたはきわどいバランスをとる必要がある。つまり、組織全体に規律を取り戻し、その一方で縄張り内の住人の間に、問題を解決し顧客を満足させるための独創的なアイデアを生み出す能力と意欲を呼び覚まさなければならないのだ。

縄張りを潰す方程式の規律については、ハーボルドはプロセス・行動・人材に関する特定の慣行を奨励している。これらの慣行は、あなたの会社で起きていることを会社全体に見えるようにし、諸手順の管理を1カ所に集中させ、職場の人間関係に刺激を与えることを目的としている。全体的な目標は、会社全体にまたがるプロセスや組織構造に規律を取り戻すことだ。