同族会社、とりわけ中小規模の同族会社に入る場合には、えてして裁定プロセスを放棄することになるからです。よりよい表現が見当たらないのでこう呼んでおきますが、裁定プロセスとは、仕事として運営されている組織で公正さを「強制する」プロセスのことです。

株式公開企業にも気まぐれな上司やいばり散らす上司がいないわけではありませんし、えこひいきがないわけでもありません。しかし、公開企業にはたいてい社員満足度調査とか人事部が「より高い権限」を持っているなどのチェック・アンド・バランス機能があり、それが社員に、紛争の際に自分の意見を申し立てる手段があるという安心感を与える働きをしています。

同族会社における裁定機能の欠如に対処する方法はただひとつ、備えをしておくことです。順調に行っているときでも、社員は必ず出口戦略を持っていなければなりません。また、CEOとして、あるいは高位のマネジャーとして同族会社に入ることを考えている場合には、前もって退職金パッケージを取り決めないかぎり行動してはなりません。

あなたの場合はどうでしょうか。

あなたはそのような契約を結んでおられる様子はありませんし、やめたくはないとおっしゃっています。となると、あなたの唯一の選択肢は適応することです。

あなたはCEOの奥さんとうまくやっていく最善の方法を見つけなければなりません。彼女の学歴面での資格がどうこうという問題は忘れてください。彼女はそれでもあなたの上司なのです。ですから、改革したいとか、意見を言いたいといった欲求を抑えて、彼女にあなたのことを知るチャンスを――そしてあなたを信頼するチャンスを与えてあげましょう。

採用が決まるまでの間にきちんとチェックしていたら、警戒信号がともっていたでしょうし、あなたはおそらくいまのような窮状に陥らずにすんでいたでしょう。でも、それにはもう遅すぎます。あなたがぶつかっておられる縁故主義は、同族会社との取引にはつきものなのです。

この取引の利点を、それが存続している間は享受してください。

(回答者ジャック&スージー・ウェルチ 翻訳=ディプロマット (c)2006. Jack and Suzy Welch. Distributed by New York Times Syndicate.)