改善への期待感を言葉の中に込めるのも重要だ。たとえば改善を求めるときに、「君ならできるはずだ」、あるいは「もっとこうすればパフォーマンスがこれだけ良くなるはずだぞ」と一言付け加える。

部下に厳しい評価を伝えるとき、心がけるべき「5つのポイント」
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部下に厳しい評価を伝えるとき、心がけるべき「5つのポイント」

同じように、部下を叱るときにも「なんで君ほどの優れた人間が、こんなこともできないのか」と期待感をにじませる叱り方をすれば、部下の心に改善へのモチベーションが生まれてくるのである。

評価なりアドバイスを伝えることだけで終わりとせずに、部下の意見を聞くことも忘れてはならない。問題点を指摘し、改善へのアドバイスを伝えたあとで、「私はこんなふうに思うから、いま、こう言ったんだけれど、君はどう思う?」と付け加える。

すると、人によっては「言われたことはわかります。ただ、私にも実はこういう理由があったんです」と自分の事情を話し出す。

よく聞いてみると言い訳にすぎないこともある。しかし、そこにはあえて目をつぶり、「なるほど、そうだったのか。わかったよ」と理解を示すことも必要だ。1カ所か2カ所、“逃げ道”を用意してやるのだ。

逃げ道を全部ふさいで相手の非をあげつらっていくと、最後には感情レベルで「もう聞きたくない」という反応が起き、結局は本人の成長にもつながらない。

逆に、自分から言い訳をしない部下もいる。そのようなタイプには、上司がわざと逃げ道をつくってやることも必要だ。ほとんど反論の余地がなく、追い詰められて雪隠詰めになっているときに、「でも、君には確かにこういう事情があったしな」と声をかける。そして「それは仕方がないかもしれん。だけど、今度からはこういうふうにやっていこうな」と持っていく。

「君はどう思う?」と必ず最後に付け加える

「君はどう思う?」と必ず最後に付け加える

ただし、こうしたやり方が通用するのは、部下との間で日常のコミュニケーションがとれていることが条件である。部下が抱えている仕事を日頃からきちんと把握しておき、問題が起きそうなときにはその場で注意やアドバイスを与える。そうした目配りもせず、改まった場でいきなり「君はダメだ」と指摘するのでは、部下としても納得できないだろう。

また、これはあくまでも私の狭い経験から言えることだが、男性に対しては最初に結論をはっきり示したり、原理原則を述べる演繹的な話し方が向いているが、女性の場合はその逆のようだ。

つまり、「これはAということだ」といきなり結論から入るのではなく、順番を逆にして、いろいろな事象を並べつつ、「だから、これは最終的にAということだよね」と帰納的に話すほうが、結果的には納得してもらいやすい。通常、ビジネスの場面で好まれるはずの論理的な話し方が、人事考課の面接では逆に理屈っぽいという印象を与え、理解してもらうのが難しくなってしまうのだ。

(面澤淳市=構成 相澤 正=撮影)