管理職が「帯域幅」を広げると何が起こるのか

「帯域幅」は、自分というシステムの重要な要素である。関与する状況や人によって、さまざまな技法を組み合わせられることが必要であり、そのためには幅が広くなくてはいけない。

まず、現在のレパートリーを診断することから始めよう。自己の強みと弱みを知ることだ。これは状況が自分の介入によって好転するか否かや、どのようなときに応援を頼んだほうがよいかを判断する助けになる。

乱世にリーダーシップを実践するためには、未知の領域に踏み込んで物事をかき回すことをいとわないどころか、その能力にたけているくらいでなければならない。たいていの人は、混乱より安定を、曖昧さより明快さを、対立より礼儀正しさを好む。だが、リーダーは、自分の仕事というものは、混乱や曖昧さや対立を生み出すことであるということを受け入れ、緊張感を変革のばねにする必要がある。

変革適応を指揮するにあたっては、混乱や曖昧さや緊張に対する耐性を強化することが特に重要なのだ。自分のやり方が正しいか確信が持てないときでも、土俵に留まり続けられるだろうか。

自分の幅を広げるということは、心地よい領域から出て、自分の無能さが姿を現すかもしれない領域に入っていくということだ。だが、われわれの経験が示唆するところでは、スキルよりも意志の力が働けば、自然と帯域幅は広がっていく。

(ロナルド・ハイフェツ、アレクサンダー・グラショー、マーティ・リンスキー=文 ディプロマット=翻訳)