明日、何が起こるかわからない時代、組織にも大きな変革が不可欠である。旧来型の組織を変えるべく、管理職がリーダーシップをフルに発揮する助けになる手法を紹介しよう。

まずは自分自身の「初期設定」を知ることからはじめよう

変化の激しい世界でリーダーシップを発揮したいなら、自分と組織内の人たちに、リスクをとり、より臨機応変に対処することを覚えさせる必要がある。

リーダーシップの実践は、医療と同じ、2つのプロセス、「診断」と「行動」を伴う。これら2つのプロセスは組織の内部と、自分の内部の2つの領域で進行する。組織と同じく、自分自身もまた、それなりに矛盾した価値観や利害、好みや性向、野心や不安を持つ複雑なシステムの一つなのだ。組織を指揮し、困難な課題をやり遂げようとするとき、自己のさまざまな忠節心の間の対立を経験するだろう。それは自分自身が一つのシステム(自分の組織)の中のシステム(一個人)であるためだ。自分というシステムを理解することは、組織で変革を指揮できるよう自分を調整する助けになる。

誰でも自分の「初期設定」がある。ここでいう「初期設定」とは、周囲の出来事の解釈法やそれらに対する対処法の癖のことだ。まず、リーダーとして初期設定の内容を知ることが不可欠だ。自分というシステムの中の3種類の初期設定を見ていく。

(1)忠節心 同僚や上司、および自分が関係を持っているすべての人に対する責任の感情。課題に対処しようとするとき、互いに対立することがある。

(2)チューニング 人間は弦楽器のようなもので、他の誰ともいくぶん異なるチューニングがされている。これは、その人の子ども時代の経験、遺伝的素質、文化的背景、社会的性別(ジェンダー)など、さまざまな要素に由来する。

(3)帯域幅 これは変革を指揮するための技のレパートリーをいう。内々での婉曲的な言い方から真っ向対決までと幅広い。

さらに、これらの初期設定を一つずつ順番に見ていこう。