ビジネス状況を把握する

新しい職務が企業の階層のどこに位置していようと、その職務に任命されたマネジャーは、状況を診断する必要がある。ワトキンスは4種類の状況を挙げる。

1 スタートアップ:新しい企業、製品、またはプロジェクトを順調にスタートさせる。
2 再建:苦境にある事業体を正常な軌道に戻す。
3 再編:企業、部署、製品、プロセス、またはプロジェクトに新たな活力を吹き込む。
4 成功を維持する:成功している事業体の繁栄を維持し、次のレベルへと押し上げる。

たとえばスタートアップの状況では、リーダーはプロセスや組織をゼロから築かねばならない。だが、「社員がすでに持っている硬直した考え方」に対処する必要はないと、ワトキンスは指摘する。それに対し、再建をめざすリーダーは、厳しい時間的プレッシャーを受ける場合があるが、部下たちはおそらく変革の必要性を受け入れるはずだ。

また、複数のレベルで診断作業を行う必要がある。たとえばマーケティング部門のリーダーは、一つの製品ラインについては再建の状況に、別の製品ラインについては成功を維持するシナリオに直面することになるかもしれない。「研究・開発グループを率いることになったマネジャーは、おそらく個々のプロジェクトの状況を査定するだろう」と、ワトキンスは言う。

状況を診断したら、新しい職務への戦略を立てよう。テキサス州アーヴィングに本社を置くエンジニアリング・建設会社、フルオールでインフラ・グループの戦略・マーケティング担当上級副社長に任命されたボブ・プリートの例を紹介しよう。プリートはその新しいポジションで仕事を始める前に、それまでの仕事で友好関係を築いていたフルオールの顧客企業のリーダーに次のような質問をぶつけた。「異動する部署が現在直面している課題は何か。強みは何で、弱みは何か。私は何を持ち込むことができると思うか。どこで問題にぶつかる可能性があるか」。こうした質問に答えてもらっていたおかげで、彼はその職に就いたとき重要な変革構想を指揮して成功に導くことができた。