「100年に一度の不況」である。新聞、テレビ、雑誌を眺めていると、「節約生活」「上手なモノの買い方」といった、しみじみした企画ばかりが目につく。なかでも、近頃よく取り上げられるのが深夜バスの話題だ。

「サラリーマンは出張費を節約するため、新幹線、飛行機から深夜バスに乗り換えている」

「サラリーマンはビジネスホテルの宿泊費を浮かすため深夜バスで移動している」

まるで、あらゆるビジネスマンが深夜バスで大移動を始めたかのような論調となっている。しかし、はたしてそれは事実なのか。それほど深夜バスの人気は高まっているのだろうか。

私はバスの関係者、深夜バスの運転手に会って、現在の利用状況を尋ねた。また、それだけでは臨場感が表現できないので、私とプレジデント誌女性編集者が実際に東京―大阪間の深夜バスに乗車してみた(※体験ルポはこちら)。ちなみに私は52歳、おやじ真っ盛り。女性編集者は30うん歳、おばみま(「おばさん未満」by酒井順子)真っ盛りである。体力が下降線をたどっているふたりは長時間移動に耐えられるのだろうか。

「東京―大阪間の人員輸送で、圧倒的に強いのはなんといっても新幹線です」

解説してくれたのはバス会社、JRバス関東の高橋美明営業部長である。

輸送人員の対前年度比較(商品別)
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輸送人員の対前年度比較(商品別)

「新幹線が一番で、次が飛行機便です。バスの需要は全体のわずか3%にすぎない。しかし、金融危機になってから需要は微増し、前年比で104%となっています。バスは安価な交通機関ですから、景気が悪くなると乗客は増える。また、深夜バスの乗客が増えてきたのには、あとふたつの理由が考えられます」

高橋さんは、(1)ツアーバス会社の伸長、そして、(2)深夜バスの多様化を挙げた。

まず(1)だが、JRバス関東や私鉄系のバス会社は道路運送法に基づく乗客輸送の会社だ。一方、昨今「豪華なバス設備」で記事に取り上げられることの多いウィラートラベル、キラキラ号といったツアーバスの会社は旅行会社に属する。ツアー会社は集客を担当し、実際に客を乗せるのは貸し切りバスの事業者だ。こうしたツアー会社は2002年の規制緩和以降に深夜バス事業に参入している。

では、バス会社とツアー会社のどこが違うかといえば、バス会社は停留所を持ち、たとえ乗客がひとりであっても時刻表に基づいてバスを走らせなくてはならない。一方、ツアー会社は「丸ビルの前集合」といった表示で客を集合させ、目的地へ運ぶ。この場合、参加者があまりに少ないと「ツアー中止」ということもありうるらしい。そして、現在乗客数が伸びているのはツアー会社なのだ。ただし、「伸びている」とはいってもそこには数字のマジックがある。