1年のたつのは早いもの。もうすぐ忘年会のシーズンである。忘年会となると、やはりカラオケは付きもの。そのカラオケに付きものの病気が、「カラオケ・ポリープ」である。

カラオケ・ポリープはカラオケが直接の原因で声帯にできたポリープをいう。

声帯は、のどぼとけ(喉頭隆起)の裏にある。2枚の声帯が振動して声が出るのだが、人間の臓器の中ではケタはずれの超高速臓器で、ソプラノの場合は、なんと1秒間に1000回くらい振動する。普通に話しているときは100回程度である。

その声帯に無理をかけすぎると、こぶができる。カラオケ・ポリープである。こぶには「血腫」と「結節」の2つのタイプがあり、血腫は血まめで、声帯の粘膜の毛細血管が破れて内出血する。

一方、結節は女性に多いポリープである。声帯のこすれ合う回数が多く、ペンダコのようにできるものである。

これができると、どちらも「声がかすれる」という症状が出る。

もちろん、症状の訴えは患者によって多少異なる。「ダミ声になってしまった」「大きな声が出ない」「音域が狭くなった」といった具合である。

治療は「保存療法」と「手術療法」。

カラオケ・ポリープができて3、4週間程度の場合は、保存療法が選択される。早期には、声帯とポリープが強く固着していないことがあり、そのときはポリープが自然に落ちて治ってしまうケースが多いからである。

保存療法を行っている間は、「沈黙療法」と「薬物治療」が行われる。

沈黙療法はその名称通り、数週間、なるべく静かに過ごしてもらう。当然、カラオケは禁止し、筆談で――。

薬物治療は、ネプライザーでステロイド吸入薬を使う。そのほか、水分を十分に摂取し、うがいをするとともに、アメなども多用する。

1カ月も黙っていられないという場合やポリープが古くなった場合は手術療法となる。

手術は喉頭微細手術といって、顕微鏡下手術と内視鏡を使った内視鏡手術が行われている。

顕微鏡下手術は40年以上の歴史のある手術で、3日間入院して全身麻酔下で行われる。喉頭鏡を用い、手術用の顕微鏡を駆使する手術である。

内視鏡手術は鼻から内視鏡を挿入し、モニターに映し出された声帯を見ながら手術が行われる。

術後は1週間程度、完全沈黙を守らねばならない。その後は、自由に話してもいいが、歌を歌えるのは術後3週間が過ぎてからである。

 

食生活のワンポイント

カラオケ・ポリープに対する日常的な食生活の予防策はないが、カラオケを歌う場所での予防策はいくつかあげられる。

飲食とは関係のない予防策として、「マイクを一人占めしない」ことと、「自分らしい歌い方を工夫する」点に十分注意すべきである。それを実行したうえで、以下の4点をしっかり守るべきである。

(1)アメをなめる!
歌ったあともワァーワァー騒いでいるのではなく、アメをなめて静かにしていると声帯をやすめることになるし、のども潤う。

(2)悪い環境を避ける!
「汚染された空気」と「乾いた空気」は声帯にとって悪い環境。綺麗な空気、湿度60%程度の室内で歌うように心がけよう。

(3)禁煙!
たばこの煙は湿度ゼロ。たばこを吸うと声帯の潤いをなくすことになってしまう。

(4)過度の飲酒は禁止!
声帯のオイルである気道液は、少量のお酒であれば増えることがわかっている。ただし、多くなると毛細血管を拡張して内出血を起こしやすくする。やはり1合までにすべきである。