大阪市を廃止し、四つの特別区に再編する大阪都構想の是非を問う住民投票が11月1日に行われる。都構想の生みの親である橋下徹氏は「現在、大阪の経済指標やその他の指標が徐々に上向きになりつつある。大阪都構想はその延長線上にあるものだ」という――。

※本稿は、橋下徹『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』(プレジデント社)より一部を抜粋したものです。

「大阪都構想」の住民投票を呼び掛ける宣伝車
写真=時事通信フォト
「大阪都構想」の住民投票を呼び掛ける宣伝車=2020年10月12日、大阪市北区の同市役所

具体的なプランなく大混乱の「英EU離脱」とはどこが違うか

大阪都構想の是非については、大阪では8年も9年も議論されてきた。イギリスはEUを離脱するかどうかで大混乱に陥っていたけど、そうならないようにきっちりと手順を踏んできたのが大阪都構想だ。大阪都構想に関する教科書も何もないところで、自分たちの頭一つで考えてきた。

「住民投票の前に、しっかりと大阪都構想の設計図を作る」

僕の8年間の政治活動は、この目標を達成するためのものだったと言っても過言ではない。他方、イギリスでは、EUからの離脱の設計図を作る前に国民投票をやってしまった。先に感覚的なイエス・ノーを問うてしまったから、現実的に離脱を実行しようという段階で問題が噴出したんだ。

大阪都構想のプロセスでは、住民投票で大阪都構想賛成多数となれば、それを実行できる設計図が住民投票前から用意されていた。大阪都構想を実行しようとしたら生じるであろう問題点・課題点については、100%完璧とは言えないまでもすべて対応策を講じて、設計図を完成させていた。その上で、2015年5月17日の住民投票に臨んだんだ。

12年前の大阪は本当にひどかった

そういう意味では、朝日新聞や毎日新聞などが大推奨した、原発の是非を問う住民投票や、在沖縄・普天間飛行場の辺野古移設の是非を問う住民投票は絶対にやってはいけない。この住民投票によって示された住民意思を実行するための設計図が、何も用意されていないからだ。

設計図がなければ、住民投票の結果は放置されるか、イギリスのEU離脱のように大混乱をもたらすだけだ。朝日新聞や毎日新聞は、大阪都構想の住民投票の実施に反対するのに、住民意思が放置される可能性の高い原発や辺野古移設の是非を問う住民投票の実施には大絶賛する。もっと勉強しなさい。

今から約12年前、僕が大阪府知事に立候補した当時の大阪は本当にひどかった。そのときの自民党から共産党までの既存政党に、あんたたちはそれまで何をやっていたのかと聞きたいくらいだ。