「ふせん紙」で考えを「見える化」

ところで、私は午前7時過ぎには出社し、午後5時の退社時間には帰宅することにしている。だが現実には週の半分はズレ込む。時間を取ってくれと駆け込んでくる部下がいるからだ。その多くは本来、判断すべきときに判断し、行うべきタイミングで行っていれば、私の通常のスケジュール内でできた案件だ。時間管理が甘く、先延ばしのしわ寄せがきてトップは時間に追われ、本人も時間をロスする。決して好ましい状態ではない。

成長途上のベンチャー企業などではトップ自ら遅くまで仕事をする姿が見られるが、私の場合、報告や決裁などは就業時間内に収まるよう求め、「瞬間の時間」をムダにしない仕事の仕方を徹底させるのが役割だと思っている。もちろん、「長い時間」を要する仕事もある。かける時間とかけない時間のけじめが大切で、これはトップが率先してやるべきだ。

足りない時間を補うため、私がもう1つ日常的に行っているのは「ふせん紙」の活用だ。ふと思いつくアイデアやこれは使えそうだと思う情報を75ミリ×75ミリの正方形のふせん紙(私はこれが一番使いやすい)にメモする。例えば、来週幹部会の予定があれば、話すネタとしてふと浮かんだことがらを手書きし、資料に次々と張っていく。当日はその順番を並べ替えながら話の組み立てを考える。

このメモ活用術は、いわば、瞬間、瞬間に浮かんだアイデアや考えの「見える化」だ。人間は改まって考える時間を取ってもなかなか思いつかない。だがふせん紙を使えば、分散的な思考の瞬間を可視化し、消滅させずに集約できる。これが私の思考を活かす時間術だ。

(勝見 明=構成 鶴田孝介=撮影)