『「瞬間の時間」を貯金する75ミリ四方の威力』

非合理に見える朝会がロスをなくしている

毎朝8時から役員が集まり、特にテーマは設けず、1時間ほど話を交わす、朝会と呼ばれる独特のミーティングがキヤノンにはある。一見非合理に見えるが、むしろ逆で時間のムダをなくすという大きな意味を持っている。

<strong>キヤノン社長  内田恒二</strong><br>1941年、大分県生まれ。<br>65年京都大学工学部精密工学科卒業、同年キヤノンカメラ(現・キヤノン)入社。<br>89年カメラ事業部カメラ開発センター所長、94年カメラ事業本部宇都宮工場長、99年カメラ事業本部長を経て、2001年常務、03年専務、06年3月副社長。<br>同年5月より現職。趣味は歴史関係の本を読むこと、ドライブ。
キヤノン社長  内田恒二 1941年、大分県生まれ。 65年京都大学工学部精密工学科卒業、同年キヤノンカメラ(現・キヤノン)入社。 89年カメラ事業部カメラ開発センター所長、94年カメラ事業本部宇都宮工場長、99年カメラ事業本部長を経て、2001年常務、03年専務、06年3月副社長。 同年5月より現職。趣味は歴史関係の本を読むこと、ドライブ。

それはどういうことか。時間には大きく分けて「長い時間」と「瞬間の時間」の2種類がある。「長い時間」とは、経過しても失われることのない時間だ。

一方、「瞬間の時間」とはその瞬間に行う判断や決断、思考、行動……などがもし行われないと、そのあとに続く時間が止まり、あるいは遅れ、その連鎖によって大きなロスに結びついてしまうような、カギとなる時間のことだ。重要なのはこの「瞬間の時間」の使い方だ。

朝会が大切なのは、1つにはトップの経営意思が共有され、いざというときにスピーディに判断し行動できるという意味合いがあるからだ。もう1つ大きいのは、朝会があることで役員1人ひとりが「瞬間の時間」を活かせるようになる。朝会に行けば、会いたい他の役員に会える。伝えるべきことを、伝えるべきときに、伝えるべき相手に伝えることができる。確認したいことをタイミングを逃さず、確認できる。正式決定ではなくとも、その場で内諾のGOサインも出せる。

役員はそれぞれ多忙であり、朝会がなければ、相手の空いている時間を探すのに手間がかかる。その時間が積もり積もれば膨大な時間のロスになり、決定がどんどん遅れる。毎朝の1時間は役員の誰もが自由に「瞬間の時間」を使うための仕組みともいえる。