業績を下支えするM&A効果

繊維・化学は苦戦!医薬は善戦
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繊維・化学は苦戦!医薬は善戦

医薬品業界は、軒並み年収ダウンとなっている他業界に比べ、まだ高水準で持ちこたえているように見える。しかし、業界関係者は、こう指摘する。

「大手4社は、主力品の米国特許が失効する2010年問題の影響が色濃くなり、準大手も苦しい谷間となり、業界全体がパラダイムシフトの時期を迎えた」

10年3月期決算では、薬価改定がなかったことに加え、海外企業の買収効果が円高の影響をカバーしたことによって増収が確保できたことで、まずは難を逃れた格好だが、今後はその反動が大きくなると予測するのだ。

「タミフルを持つ中外製薬は安定しているが、業界全体を見渡すと新薬のメドはどこもなく、苦しい状況。今後は薬品製造も外注が増え、欧米中心のマーケットから新興国へシフトしていく流れとなる」(前出・業界関係者)

化学メーカーも医薬品業界とともに高年収企業が並ぶ。ここでもキーワードは「医薬」だという。

「三菱ケミカル、富士フイルム、信越化学、旭化成、三井化学など、軒並み医薬関連事業で収益を維持している状態。今後、さらに医薬メーカーとの連携、医薬業態の拡充が進んでいく」(前出・業界関係者)

衣料・繊維業界は、レナウン、ユニチカといった上場企業が平均年収で500万円割れとなっており、業界全体で低水準化を示している顕著な例だといえるだろう。その中で、押尾学被告の事件で一躍注目を集めた女性下着の通販企業、ピーチ・ジョン(PJ)。08年、このPJを完全子会社化したのがワコールHDだ。ワコールは、インナーを中心とした商品開発が特徴だが、近年は「エイジング」をキーワードに、加齢による体形変化への取り組みも積極的で、単なるファッション・インナーのブランドだけではなくなっている。09年は米国や中国などの海外展開が好調だったことが、業績を支えているといえるだろう。

化粧品や家庭用品の部門で、常に好調を維持してきた花王だが、2010年30万減と大きく年収を落としたが、今後の見通しは決して暗いものではないようだ。というのも、10年度4~9月期(上期)の連結営業利益は従来予想を40億円程度上回り、530億円前後になる見通しで、10年夏の猛暑効果によりシャンプーなどの洗剤原料や制汗剤の売り上げも好調。同じく業界大手の資生堂、マンダムやライオンも好調が続くと見られている。

※すべて雑誌掲載当時