あなたの職場では、「売れる営業」と「売れない営業」は仲良く話をしているだろうか。トップセールスの調査をしていて気付いたのが、お互いに避けているわけでも仲が悪いわけでもないのに隣に座っていてもほとんど会話をしないということだった。

身近にトップセールスというお手本がありながら、そのノウハウが社内で共有されない原因の一つがここにある。この「売れる営業と売れない営業のコミュニケーション不足」の謎は、営業ノウハウ共有の秘訣に直結する重要な問題だ。

なぜ、両者は会話しないのか。その理由は3つの項目に整理できる。

1つ目は、トップセールスがノウハウを話したくないからだ。これは営業の強い会社や歩合制で給与に大きな差が出るような会社に見られる傾向である。自分のノウハウや顧客情報をオープンにすることが、自身のリスクになると考えるのだ。

「誰も知らない情報や人脈を持っていることが自分の存在価値だ」

そう考えている人は自分の立場を確保するために、極力コミュニケーションの機会を減らそうとする。ときどき、成果は出していてもほとんど会社に来ない営業担当者がいるのはそのためだ。

2つ目は、トップセールス自身が、自分が売れている理由を整理できていないからである。トップセールスに「なぜあなたは売れたのですか?」と質問すると、「何も特別なことはしていません」と答える。謙遜している場合もあるが、そのほとんどは売れた理由を自分の言葉で整理できていないのである。

しかし、「順を追って最初から考えてみましょう」とインタビューしてみると、成功した要因がたくさん出てくる。そして最後に「では、成功したポイントはこの3つですね」とこちらがまとめると、「初めて整理できました」と驚いた表情を見せる。つまり、自分が売れた理由を他人に説明できるレベルまで整理できている人は極めて少数なのだ。

トップセールスは常に「どうすればもっと売れるか?」と考えている。しかし、「なぜ売れたのか?」とは考えない。過去を振り返り客観的に分析する習慣がないのである。

新人営業担当者が「困っているんですけど、どうしたらいいですか?」と質問しても、「普通にやればいいんだよ」といった答えしか返ってこないのはそのためだ。本当は参考になる貴重なノウハウを豊富に持っているのに、それが死蔵されているのである。

3つ目の理由は「精神論」だ。トップセールスは人一倍の努力をしている人が多いため、どうしても精神論が先走ってしまう。

「どうすれば売れるようになりますか?」

そう聞くと、こんな答えが返ってくる。

「バシッと決めるしかない!」

自分は誰にも教わらず、苦労して成果を出してきた――。そんな思いがトップセールスを精神論に走らせる。

もちろん、意識ややる気は重要だ。しかし、ノウハウを具体的な方法論に落とし込んで話さなければ相手には伝わらず、実践には結びつかない。

これら3つの理由から、売れる営業と売れない営業は会話が噛み合わず、話をしなくなりがちだ。価値観と意識のギャップがコミュニケーション不足を生み、ノウハウの共有化を阻んでいるのだ。

(構成=宮内 健)