(3)リーダーとしての正しい伝え方を見つける

詩人のウォルト・ホイットマンは「正しい声で語りかける者には、誰であれ私は必ず従うだろう」と記しているが、この言葉は効果的なリーダーシップには説得的コミュニケーションがきわめて重要だという考えを示すものだ。この言葉はさらに、リーダーのコミュニケーションを個人の関心や利益や流儀を満たすように組み立てることの重要性も伝えている。

あなたが選ぶコミュニケーション方法が、自分と自分に従う側の人との関係を象徴することを肝に銘じよう。あなたがCEOで、買収を支持するよう取締役会を説得しようとしていると仮定しよう。

あなたがこの取引の条件と結果を詳しく記したメモを個々の取締役に送ったとすると、どうなるだろう。一般的にメモを送るという方法は、意図的にせよ、そうでないにせよ、取締役たちの支持を当然だと思っているというシグナルになりかねない。あなたが彼らの意見にほとんど重きを置いておらず、彼らではなくあなたが事をとり仕切るのだと、受け取られるおそれがあるわけだ。

一人ひとりの取締役のもとに直接出向いて、この買収の重要性を説明するという方法をとった場合はどうか。直接会って説明するというやり方は、個々の取締役に、その人物の支持が重要であること、またその人物の自主性と判断をあなたが尊重していることを伝えることになる。さらに、そのような1対1の会談を持つことで、あなたは取締役たちの個人的な利益や関心を知ることができ、それらの利益や関心を満たし、なおかつ会社の将来のために重要な買収を実行できるような仕組みをつくることができる。

(4)組織のビジョンについて交渉する

組織の大小にかかわらず、ビジョンを打ち出すことはリーダーの役目とみなされている。強力なCEOがいなければその企業にはビジョンがない、と思われがちだが、それは違う。組織のあちこちにいる人々が、この会社はどのような会社であり、どのような会社であるべきかについてさまざまな考えを持っている。

そのため、集団の針路を決める作業の最大の課題は、その集団のメンバーが持っている多様なビジョンの中から1つのビジョンをまとめることにある。ビジョンをまとめるプロセスは交渉のプロセスと同じだ。

優れた外交官と同じように、リーダーは、メンバーの間にそのビジョンを支持する連合を築くことで、共通のビジョンを生み出す。組織のビジョンを支持する連合を築くためには、メンバーの利益を理解する、効果的な協働関係を築く、正しい方法でコミュニケーションをとるなど、前述した交渉の原則を効果的に使う必要がある。それはすべての主要プレーヤーと関係を築くこと抜きには進めることのできない、時間と労力のかかるプロセスなのだ。

(翻訳=ディプロマット)