このような医師間の格差を背景に、成長しつつあるのが、資金の融資から土地の斡旋、建物の建設、看護士の募集まで、お膳立てしてくれる医師の独立支援ビジネスです。給料は安いのに仕事は過酷という勤務医の生活を捨てて開業すると、儲かるうえに仕事も自分のペースででききるわけですから、高度な医療などをライフワークとしないなどを除けば、開業を躊躇する理由もないでしょう。そうなれば、ますます、病院の勤務医は減ります。とくに、勤務条件がきつい診療科ではその傾向が強くなります。そうなれば、病院、ひいては救急医療体制が、さらに悪循環となります。

医師向けの独立支援ビジネスは開業後の利益に応じて、成功報酬をもらう仕組みです。なかなかうまいところに目をつけたと思いますが、私は、この手の商売を、保険の点数が病院ではなく開業医に手厚くなっていることから派生した「あだ花ビジネス」だと思っています。

こういう、あだ花ビジネスも保険の点数が適正化されれば、じきになくなるでしょう。医療の根本を支えるのは病院です。その病院に栄養を与え、体力を蘇らせることが重要なのです。

※この連載では、プレジデント社の新刊『小宮一慶の「深掘り」政経塾』(12月14日発売)のエッセンスを全8回でお届けします。

連載内容:COP15の背後に渦巻くドロドロの駆け引き/倒産に至る道:JALとダイエーの共通点/最低賃金を上げると百貨店の客が激減する/消費税「一本化」で財政と景気問題は解決する/景気が回復で「大ダメージ」を受ける日本/なぜ医療の「業界内格差」は放置されるのか/タクシー業界に「市場原理」が効かない理由/今もって「移民法」さえない日本の行く末

(撮影=小倉和徳)