AP/AFLO=写真
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台湾民進党主席 蔡 英文(Tsai Ing-wen)
1956年、台湾屏東県生まれ。台湾大学卒業後、米国コーネル大学で法学修士、英国ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学博士を取得。


 

台湾民進党が政権奪還をかけて選びだしたのは、政治家経験わずか7年の独身女性だった。それが行政院長(首相)まで務めたこの道30年のベテラン政治家、蘇貞昌氏を抑えて4月27日、正式に総統候補に決定した。年功序列や男尊女卑の価値観が根強い台湾政界ではそんな“駆け出しの小娘”に任せられるのか、という声もある。だが、総統候補としての最初の会見で「団結して台湾を取り戻そう」と言って唇を引き結んだ化粧っけのない顔には、女性特有の甘えも媚も一切なかった。あるのは台湾のために身を捧げようというストイックなジャンヌ・ダルクの殉教にも似た覚悟だ。

大地主のお嬢様として父親に溺愛されて育ち、台湾大学時代は陽明山麓の別荘から真っ赤なマイカーで通学していたが、目立たないように遠くに駐車するような控えめな性格だったとも。米英留学後、国立政治大学教授として学者人生を送るはずが、時の総統・李登輝に才能を見いだされ、ブレーンとして政策に関わるようになった。1999年に発表された、中国と台湾は特殊な国と国の関係であるという「二国論」の起草に参加した。2004年に民進党から立法委員選挙に出馬・当選し政治家デビュー。その4年後にまさかの民進党主席に。野党に転落し内部対立でガタガタになっていた党の再建は、「父が生きていたら絶対許さなかった」と振り返るほどの困難な仕事だったが、2年で成し遂げた。陳水扁政権の国策顧問を務めた評論家の金美齢氏は「ウイットもあり気さくだが、タフネゴシエイター。現実的で日々成長できる人」とその資質に期待する。

独立を追求する原理主義者ではなく、「台湾は中国の一部ではない」という現状維持路線を掲げて来年、親中派の馬英九政権に挑む。