糖尿病は“国民病”とまでいわれるほど患者の増えている病気で、患者・予備軍を合わせると1620万人時代となった。どんな病気かを説明すると、糖代謝の異常が引き起こす病気といえる。

食事で摂った糖質はブドウ糖という形で小腸から吸収されて血液中へ。これが血糖である。血糖は体中の組織に運ばれて全身のエネルギーになる。が、このときに血糖だけでは細胞の中に取り込まれない。膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが必要になる。ところが、糖尿病の人の場合はインスリンが充分にでなかったり、作用が充分でないために、血液中に血糖があふれてしまう。だから、血糖値が高いのである。

糖尿病は早期ではなにも症状がないのでほうっておく人が多いが、進行するとさまざまな合併症を引き起こす。実は、糖尿病は、病気そのものよりも、その合併症が恐ろしい病気なのである。

3大合併症といわれる「糖尿病網膜症」は中途失明の原因の第1位、「糖尿病腎症」は人工透析へ移行する原因の第1位、そして「糖尿病神経障害」は手足の感覚が鈍くなり、傷を放置しておくと壊疽(えそ)にも結びつく。

この怖い糖尿病……予防のために今、食後の血糖値が高い「食後過血糖」、つまり食事をすませて2時間後の血糖値が高い人が注目を集めている。食後過血糖の人は糖尿病予備軍といわれる境界型に属する。境界型の人はこれまでは“まだ大丈夫”と判断されていたが、今は“もう危ない”が常識になった。前述した3大合併症は細小血管障害だが、そのほかに大血管障害の心筋梗塞、脳梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症などに結びつきやすいのは、糖尿病の人と食後過血糖の人が同程度であることが、大規模臨床研究で明らかになったからだ。

食後血糖の正常値はブドウ糖負荷試験2時間値が140mg/dlまで。200以上は糖尿病で140~200が境界型。数値が170を超える食後過血糖の人がそのままの生活を続けると2~3年後には70%程度の人が糖尿病になってしまう。予防のためには、糖尿病と診断される前に、食後血糖をしっかりとチェックして、食後過血糖とわかったら、まだ大丈夫と油断するのではなく、すぐに食事や運動を見直して、生活改善に徹底して取り組むことだ。食後過血糖以外に「高血圧症」、「高脂血症」、「肥満症」などがあれば、よりしっかりと食事・運動療法に励むべきである。

 

食生活のワンポイント

食後過血糖の人も糖尿病の人と同じ食事療法を行うべきである。まずは1日に食べる食事量を決めることが基本。

1日の摂取総エネルギー量は以下のように計算する。標準体重(kg)を算出する。計算式は身長(m)×身長(m)×22。この標準体重に運動量に見合った指数を掛けると1日の摂取総エネルギー量になる。

一般事務職や主婦の方々は20~25キロカロリーが指数、外出の多い営業マンや立ち仕事中心の方々は25~30キロカロリーが指数、肉体労働者やスポーツ選手は30~40キロカロリーが指数となる。

たとえば、身長1.7メートル、45歳の一般事務の方は、標準体重が63.6キロ。すると、1日の摂取総エネルギー量は指数を25キロカロリーにして計算すると約1590キロカロリー。これを朝・昼・夕食にふりわけてバランスの良い食事を摂るようにする。

 「何も食べられない!」と悲鳴をあげる人もいるが、実際にはごはん、みそ汁、漬物におかず2くらいは充分に食べられるので、問題はない。

ただ、どうしても寂しいという人は、きのこ類、海藻類はノンカロリーなので、上手にメニューに取り入れると、おかずを1品増やすことも可能だ。そして、1回口に入れたら30回以上かむようにして、ゆっくり食べると満腹感が早くきて、充分に満足できる。