最悪なのは、役職が高い人の席のすぐ横に集まるためのスペースがある場合です。いくら座り心地のいい椅子があっても、気軽に使えないので、いつも閑古鳥が鳴いているはずです。

わがKDIのオフィスでは空間の多重利用を心がけています。たとえば、会議室という部屋はうちにはありません。お客様を呼んでのワークショップやセッションも、普段仕事をしている場所の机や椅子を動かして即席のスペースをつくり、そこで実施します。折角、来てくださったお客様を別室に閉じ込めないようにしているのです。

結構な手間もかかるのですが、その仕事とは直接関係がない人との間にも交流が生まれるのを期待しているからです。名刺交換をして一言二言交わしておけば、次に仕事を一緒にしたり、知恵を借りたりする場面になったら、「ああ、あのときの!」で通じるかもしれません。人と人をつなげる。これもサラサラの組織づくりに不可欠なことです。

最近は喫煙者が激減していますが、タバコ部屋は、雑談と情報交換の貴重な場です。「ネット上のタバコ部屋」をキャッチフレーズに、社員同士が情報交換を行うSNS(Social Networking Service)を立ち上げる会社が増えてきました。

こうしたSNSの運営で大切なのは、仕事熱心な、デキる人たちにいかに参加してもらうか、ということです。「仕事をやらないヒマ人が集う場」という評判が立たないようにしなければなりません。私がコンサルティングしたシステム会社では、ある役員が書くブログがSNSの最も人気のあるコンテンツにまで成長し、非常に利用が活発です。こうやってトップを巻き込むことができればまさに鬼に金棒です。

逆に、「顧客からのクレームは確実にアップして開示せよ」といった仕事に直結することを義務化すると、潮が引くように利用者が減ってしまいます。アウトプットは求めない。これが鉄則です。求めるならほかの仕組みをつくるべきです。社内の廊下で偶然出会った懐かしい人とおしゃべりするような、普段まともに聞いたら「勉強不足だ!」と怒られそうなことでも聞けてしまうような、そういう柔らかい雰囲気をつくることが大切です。